救急車をタクシー代わりに使う人はいる?元消防士が語る不搬送と適正利用の本音

救急車はタクシーじゃない。消防士がムカつく瞬間③ 消防士のリアル

💡 この記事でわかること

  • タクシー代わりの救急車利用の実態と、救急隊の本音
  • 救急車は呼ばれたら必ず運ぶわけではない理由(不搬送)
  • 危ないめまいの見分け方と、救急隊の聴取「SAMPLE」
  • 本人が搬送を拒否した場合と、救急車の適正利用・#7119

今回は「消防士がムカつく瞬間」の3つ目を、元消防士として本音で書いていきたいと思います。

僕は5年半、消防士として勤めたあと、今はトラックドライバーをしています。

大変恐縮なんですが、今回も救急の話です。僕自身、救急の出動をかなり重ねてきました。母数が多いと、印象に残った現場もそれだけ多く、鮮明に覚えています。

後半では、救急車の適正利用についても書いていきます。

タクシー代わりの救急とは|軽症で救急車を呼ぶ事案

今回のムカつく瞬間は、タクシー代わりの救急です。これも、結構多かったです。

タクシー代わりの救急と言われても、ぱっとイメージしづらいかもしれません。

要は、救急車を必要としない軽い症状で救急車を呼んで、タダで病院に運んでもらおう、という事案です。

主訴は「動悸がする」「息苦しい」でも受け答えはできる

救急指令が鳴って、出動します。

主訴は、動悸がする。息苦しい。そういう内容で呼ばれていきます。

でも、受け答えはきちんとできます。

本当に緊急な事案は、家族からの通報が多い

緊急性のある事案は、ご本人からの通報ではなく、家族からの通報が多いです。

本当に緊急なら、本人は症状を訴えることもできません。息をするのもやっと。体を動かすこともできないし、喋ることもできない。

もちろん、本人が喋れて多少動けても、重篤な事案はあります。そこは誤解しないでほしいです。

ただ、タクシー代わりの救急は、重篤でもないし、重症でもない。そういう事案です。

現場に着くと、玄関の前で待っている

現場に着くと、もういるんです。玄関の前に。

「あなたが通報者ですか?」と聞くと、「あ、そうです」と出てきて、何食わぬ顔で救急車に入っていきます。

もちろん、自分の足で入っていきます。そして、ベッドに自分でゴロンと横になって、「こういう症状が辛いです」と訴えます。

緊急性がなければ不搬送に|救急隊が考えていたこと

こういうときは、体調をしっかり観察したうえで、なるべく不搬送に持っていきたいと考えていました。

不搬送というのは、病院には運ばないということです。

バイタルなど一式を測って、緊急性がないことを確認する。そのうえで、今行っても病院が受け入れてくれるかわからないので、ご自身で救急外来にかかってもらう。あるいは、次の日に自分でクリニックや病院に行ってもらう。

緊急性がないと判断したときは、なるべくそういう方向に持っていきました。

中には、呼ばれた以上は運びたい、という隊長もいました。

でも基本的には、不搬送にして、重篤な方に救急車を回せるように帰る。それが、市民のためになると思っていました。

生活保護受給者と救急車|僕の肌感

ここからは、あくまで僕の肌感です。

こういう出動では、生活保護を受けている方のケースが目立ちました。

調べてみると、生活保護を受けている方は、医療費の自己負担が原則としてありません。そして、車を持つことも基本的にはできません。病院には、公共交通機関で行くことになります。

自分の足でも行きたくない。タクシーでも行きたくない。自転車があっても、自転車では行きたくない。だから救急車を呼んで、運んでもらう。

もちろん、生活保護を受けている方がみんなそうだというわけではありません。ただ、重篤な事案でもないのに、タクシー代わりに救急車を使いたいのが透けて見える方も、中にはいらっしゃいました。

きれいごとではなく本音で書くと、そういう方々は、おこがましいなと思っていました。

「緊急性はありません」と伝えるのも救急隊の仕事

そういう方のときは、今は緊急性がないとはっきり伝えて、ご自身で行ってもらうように促していました。

これは、救急隊の能力としても必要なことだと思っています。

緊急性がない場合は、なるべくご自身で行ってもらう。これは、あまり知られていないことだと思います。

救急車は、呼ばれたら必ず運ぶわけではない

呼ばれたら絶対に病院に運ぶ、と思っている方もいると思います。

そこは誤解してほしくないんですが、救急車は、重篤な方のための公共のサービスです。

もちろん、僕らはしっかりバイタルを測って、観察や聴取をしていました。搬送した方がいいと判断した方は、絶対に搬送していました。

本人や家族が強く求めていれば、そこは運ぶしかない、という方向で動くこともありました。

ただ、本人からの通報で、家族もいなくて、軽そうな症状を訴えている。明らかにタクシー代わりだろう、という方もいました。

救急車で運ぶことが多い症状と、軽い症状で呼ばれるケース

めまいは運ぶことが多い|回転性めまいと浮動性めまいの違い

ただ、めまいは別です。

めまいは、脳の病気の疑いもあるので、運ぶことが多かったです。

めまいには、大きく分けて2つの種類があります。

一つは、ぐるぐる回るめまいです。回転性めまいといって、自分や周りがぐるぐる回っているように感じます。耳が原因のことが多いと言われています。

もう一つは、ふわふわするめまいです。浮動性めまいといって、体がふわふわ浮いているように感じます。脳幹や小脳といった、脳が原因のこともあります。

僕の認識では、ふわふわするめまいが危ない。ぐるぐる回るめまいなら、一過性のものかな、というものでした。

ただ、ぐるぐる回るめまいでも、小脳出血のように脳が原因のことがあります。まっすぐ歩けない、ものが2つに見える、激しい頭痛がある。そういうときは、迷わず救急車を呼んでください。

「熱が38度5分でだるい」で救急車を呼ぶケース

明らかに軽い症状で呼ばれることもあります。

ちょっと気持ちが悪い。熱が38度5分あって、だるい。それだけで救急車を呼ばれる方もいます。

バイタルを測ると、正常です。熱があるので脈が少し速いかな、くらいです。

そういう方には、救急隊の方から、こう伝えていました。

「明日は病院がやっているので、ご自身でタクシーで行くなり、家族に付き添ってもらうなりして、病院に行ってください」

「今、この救急車が一台出ています。もっとひどい症状の方に、救急車を回せなくなってしまうことがあります」

「その方が、医療費も安く済むと思いますよ」

そういうメリットも、お伝えしたりしていました。

補足|本人が救急搬送を拒否するケース

ここからは、補足です。

逆のケースもあります。

家族が、明らかに本人の様子がおかしいと救急車を呼ぶ。でも本人は、「病院には行きたくない」と拒否してしまう。

救急隊の聴取「SAMPLE」とは

そういうときも、僕らはしっかり聴取をしていました。

SAMPLE(サンプル)と言ったりするんですが、聞き取る項目の英語の頭文字です。

S:症状(Symptoms)

A:アレルギー(Allergies)

M:飲んでいる薬(Medications)

P:既往歴(Past history)

L:最後に食事をとった時間(Last meal)

E:何があったか(Events)

全部ひっくるめて聞いて、バイタルも測っていました。

最後のE、イベントというのは、今日何をしていて、こういう症状が出て、今も治まらない。そういう流れのことです。

そのうえで、今、救急で診てもらった方がいい、と伝えていました。

それでも、本人が搬送を拒否してしまうケースがあります。

救急車で運ばれると、すぐに処置が始まる

自分で救急外来に行くと、基本的には来た順番で診てもらうことになります。順番待ちです。

救急車で運ばれると、その場で処置が始まります。

僕ら救急隊が病院のベッドに移して、そこで引き継ぎます。病院の資機材をつけるのを手伝ったりすることもあります。同時並行で、CTを速攻で撮りに行ったりして、原因を探っていく。

本人が受け答えできても、絶対に運んだ方がいい、というケースは結構あります。

本人が搬送を拒否したら、救急隊は運べない

ただ、本人が拒否してしまうと、僕らは運べません。本人の承諾がないと、運ぶことはできません。

意識がない方は、そもそも意思疎通が取れないので、呼ばれた以上は運ぶしかありません。

このあたりの法律がどうなっていたのか、今になって気になったので調べてみました。

救急隊には、本人の意思に反して強制的に運ぶ権限はないそうです。意識があって自分で判断できる方が拒否すれば、搬送はできません。意識がない方の場合は、本人が同意するだろうと考えて運ぶ、という考え方です。

救急車の適正利用|迷ったら呼んでいい・#7119

最後に、救急車の適正利用についてです。

調べてみると、令和6年に救急車で運ばれた人のうち、46・9パーセントが入院の必要がない軽症などでした。

適正利用と言っても、救急車を呼ぶこと自体を否定するわけではありません。迷ったら、呼んでいただければいいと思います。

緊急性があるかどうかは、駆けつけた救急隊が観察して判断してくれます。

もう一つ、知っておいてほしいのが「#7119」です。救急安心センターといって、救急車を呼んだ方がいいのか、病院に行った方がいいのか迷ったときに、電話で相談できる番号です。医師や看護師などの専門家が、緊急性があるかどうかをアドバイスしてくれます。

ただ、地域によってはまだ使えないところもあるので、お住まいの地域で使えるか確認しておいてください。

そのうえで、救急車を呼ぶと、こういう一面もある。それを頭に入れておいていただければと思います。

▼消防士がムカつく瞬間②は、こちらです

消防士がムカつく瞬間②|深夜の居酒屋からの救急要請、泥酔者の搬送の本音

▼消防士がムカつく瞬間①は、こちらです

消防士の報告書はなぜ大変?種類・差し戻し・印鑑リレーの実態(ムカつく瞬間①)

▼救急に出続けた夜の話は、こちらに書きました

消防士の仕事で本当にきつかったこと4つ。夜間救急と真夏の訓練

よくある質問

Q1. 救急車を呼んだら、必ず病院に運んでもらえますか?

必ずではありません。救急隊がバイタルを測って観察し、緊急性がないと判断した場合は、ご自身で病院にかかるよう促すことがあります。搬送した方がいいと判断した場合は、もちろん搬送します。

Q2. 救急車を呼ぶか迷ったときは、どうすればいいですか?

迷ったら呼んでいただいて大丈夫です。緊急性は駆けつけた救急隊が判断します。#7119(救急安心センター)に電話して相談する方法もありますが、地域によっては使えないところもあります。

Q3. 本人が救急搬送を拒否したら、どうなりますか?

救急隊には本人の意思に反して強制的に運ぶ権限はないため、意識があって自分で判断できる方が拒否すれば、搬送はできません。意識がない方の場合は、本人が同意するだろうと考えて運びます。

質問・相談は公式LINEでも受け付けています

試験のこと、職場のこと、転職のこと、なんでも気軽にメッセージください。

LINEで相談する →

最後まで読んでいただきありがとうございました。

元消防士のトラックドライバー🧑‍🚒🚚

コメント

タイトルとURLをコピーしました