💡 この記事のポイント
- 指令音の直前に鳴る「ブツッ」で起きられたら一人前
- それができるのは、眠っていても意識が仕事モードだから
- だから仮眠時間は「休んでいる時間」ではない
- 同じ6時間でも、仮眠と休日の睡眠では疲れの取れ方がまったく違う
今回は「消防士の睡眠と仮眠」というテーマで、元消防士として本音で書いていきたいと思います。
僕は5年半、消防士として勤めたあと、今はトラックドライバーをしています。
仮眠時間は、本当に休めているのか。当務中の眠気と、どう付き合っていたのか。この2つを、順番に書いていきます。
指令音の前の「ブツッ」で起きられたら一人前
指令音の”前”に鳴る、「ブツッ」という音
夜間の仮眠中、出動の指令音が鳴りますよね。
でも実は、指令音が鳴る直前に、館内放送が入る「ブツッ」という音がするんです。
その「ブツッ」で目が覚めたら、一人前。これが今日の「あるある」です。
0.5秒の差が、現場では効いてくる
なぜこれが一人前の証なのか。
夜間の出動をどんどんこなしていると、放送が入るときの「ブツッ」という音を、体が拾うようになるんです。
その音で起きられると、指令音が鳴った時点で、もう起き上がっている状態になります。0.5秒か、1秒くらい早い。
たったそれだけ、と思うかもしれません。でも一分一秒を争う現場では、これが確実に有利に働きます。
準備が1秒早ければ、考える時間が1秒増えるということですから。
3年目で、はじめて起きられるようになった
正直に言うと、僕も最初からできたわけではありません。
1〜2年目のころは、指令音が鳴ってから起きていました。「ブツッ」で起きられるようになったのは、3年目以降です。
あのとき、はっきり思いました。ああ、本当の消防士になったんだな、と。
みんなが寝ている仮眠時間に、その音だけを拾って起きられる。これは、寝ている間も「出動があるかもしれない」という意識が頭にないと、絶対にできません。
だから僕は、これができたら一人前と認めてもらっていいと思っています。
民間に来たら、目覚ましで起きられない日がある
面白いもので、消防を辞めて民間企業に転職してからは、まったく逆になりました。
目覚ましで起きられないことが、普通にあります。
耳元に置いていても、です。毎月ではありませんが、2〜3ヶ月に1回くらいは「起きられなかった」という日があります。
同じ人間なのに、この差は何なのか。答えははっきりしています。あのころは、寝ている間も仕事のことが頭にあったからです。
消防士の仮眠時間は「休み」なのか
仮眠時間は「休み」ではない
ここまでが「あるある」の話です。ここからが、本当に伝えたいことです。
消防の仮眠時間というのは、出動に備えている時間です。休息時間とはいえ、ちゃんとよく眠れているかというと、まったくそうではありません。
そして、ここが誤解されやすいところなんです。
消防士の24時間拘束が話題になるとき、こういう見方をされることがあります。
「24時間拘束って言っても、寝てる時間あるじゃん」
「仮眠時間は寝てるんだから、勤務に入らないでしょ」
正直に言います。それは、違います。
「ブツッ」で起きられる、ということの意味
なぜ違うと言い切れるのか。まさに、さっきの「あるある」がその証拠だからです。
放送が入る前の「ブツッ」という音で起きられる。それはつまり、眠っていても意識が研ぎ澄まされているということです。
休息時間とはいえ、頭のどこかに仕事モードを置いたまま寝ている。消防をやっている中で、僕はそれをはっきり感じていました。
そして実際に、指令音が鳴れば出動しなければいけません。日付をまたいで、そのまま朝を迎えることも普通にあります。
だから、「寝ているから勤務じゃない」という言い方は、元消防士としては、あまり広まってほしくないんです。
同じ6時間でも、疲れの取れ方がまったく違う
これは、体感としてはっきり言えます。
たとえば、同じ6時間の睡眠だとします。仮眠でしっかり6時間眠れた日と、休みの日に6時間眠った日。この2つは、体の疲れ方がまったく別物です。
出動が一件もなくて、6時間まるまる眠れたとしても、疲れはかなり残っています。
理由は考えれば当たり前で、日中にすでに訓練をして、出動もして、頭もフルに使って活動しているからです。その時点で、体はもう疲れている。
そのうえで、「これから出動があるかもしれない」ということを頭に置いて眠る。だから、睡眠の深さがそもそも違うんです。
非番のあとの睡眠だけが、本当の睡眠だった
逆に、はっきり違ったのが非番の日です。
勤務が終わって非番になり、次の日も休み。そういうときの睡眠は、起きることを考えなくていい。
その状態で眠ったときの回復量は、仮眠とはまったく別物でした。
これは僕の体験ベースの話です。異論がある方もいると思います。ただ、少なくとも僕の実感としては、間違いないと思っています。
当務中の眠気との付き合い方|消防士に睡魔対策はあるのか
メッセージで、「出動が重なって睡眠時間を確保できない日、眠い時はどのように睡魔を抑えていましたか?」と聞かれたことがあります。ここからは、その答えです。
消防士に「睡魔対策」はない
先に結論から言ってしまうと、消防士に、ちゃんとした睡魔対策はありません。
トラックドライバーであれば、ガムを噛んだり、誰かと電話したり、音楽を爆音で聴いたり、自分一人の仕事だからこそできる対策がいろいろあります。でも消防の場合は、出動がかかってしまえば、もうどうしようもないんです。眠かろうが何だろうが、指令が鳴れば現場に向かうしかありません。
しかも当務中は、まとまった睡眠を取る暇そのものがない。だから「眠い時にどうするか」というより、「眠いまま、どう乗り切るか」という話になってきます。
それでも乗り切れるのは「チームだから」
じゃあどうやって乗り切っていたかというと、答えは「チームだから」です。
消防の出動は、救急なら3人、火災や救助なら3〜4人で活動します。だから、たとえば機関員(運転手)だけが眠くても、眠くない人に運転を代わってもらえる。一人に負担が偏らないように、隊の中で順繰りに回していけるんですね。実際、救急だと「行きはこの人が運転、帰りは別の人が運転」という形にして、その間に救急車内で軽く目をつぶる、ということもやっていました。
僕がまだ1〜2年目で、機関員ができなかった隊員の頃は、むしろ先輩のほうが気を使ってくれました。機関員や隊長が「まだ出動があるかもしれんから、後ろで寝てていいよ」と声をかけてくれたんです。隊はチームで動くもの。隊長や機関員次第で、いかに隊全体をいい状態に保つか。そのマネジメントの中で、僕は助けられていたなと思います。
もちろん、すべての消防署がそうとは限りません。ただ、機関員に偏りが出ないように回していく工夫は、どこの消防署でも、多かれ少なかれしているんじゃないかと思います。なぜなら、機関員は隊員の命も、傷病者の命も預かっている。その重い責任を、一人の人間だけに背負わせ続けるのは、やっぱり良くないんですよね。だからこそ、機関員を何人もこなせる状態が、消防署としては理想なんです。
一番眠くなるのは「出動が終わった後」
意外かもしれませんが、現場に出ているうちは、正直あまり眠くなりません。出動中はアドレナリンがバーッと出て、戦っているような状態になる。どんどん頭が冴えてくるんですよね。
一番眠気が来るのは、その出動が終わった後です。救急なら、傷病者を病院に送り届けた帰りの車内。緊張がほどけて、気が緩む瞬間。でも、そこで一度気を緩めないと、次の出動に集中できない。だからどうしても、帰り道で眠気がやってくるんです。
そして、本当に怖いのはここからです。事故が多いのは、出動した直後と、帰署の途中。寝起きでボーッとしたまま運転していると、最初の1分くらいは、サイレンの音も聞こえないくらいふわふわしている。記憶がほとんどない、ということもありました。脳はまだ起きていないのに、知識と経験だけで体が動いている、という感覚です。
小さな対策は「暇があったら目をつぶる」
大きな対策はない、と言いましたが、小さな対策ならあります。それは、「暇があったら目をつぶる」。本当にそれだけです。
でも、目をつぶるだけでも、意外と回復するんですよ。昼寝もそうですよね。たった10分横になって、意識がなくなって、パッと目覚めた瞬間にスッキリする。あの感覚です。寝不足のときは、軽く目をつぶるだけでも、けっこう効果的だと思います。
もちろん、トイレに行って何時間も帰ってこない、みたいなのはダメですけどね(笑)。あくまで、ちょっとした合間に、です。
仮眠から出動へ|覚醒のコツは「とにかく早く動く」
当務でしんどいのが、仮眠中の出動です。完全に休んでいる状態から、一気に出動の覚醒状態まで持っていく。これは体にとって、ものすごい負担なんです。実は、ベテランでも仮眠中の出動が苦手な人はすごく多い。それくらい、切り替えが難しいんですね。
僕自身、いちばん最初の出動のときは、指令音に気づかないくらい深く眠っていて、先輩に起こされて「え、今鳴ったんですか」となったことがあります。今思い出しても苦い記憶です。だから後輩には「最初のうちは、一人で寝ないようにな」と伝えていました。
で、僕が覚醒のために意識していたのは、とにかく「早く動く」こと。「あー眠い、だるい」と思う前に、バッと体を動かす。下に降りて、防寒衣を早く着る、感染防止衣を早く着る、出動場所が表示される画面に誰よりも早く行く。当たり前のことなんですけど、いつもより早く動く勢いで、装備を整える。頭と体を冴えさせるには、もう、早く動くしかないんです。ただでさえ僕は人より動きが遅かったので、そこは徹底していました。
本音を言うと、この働き方は体への負担がすごい
最後に、これは本音なんですけど、この働き方は、本当に体に負担がかかります。
機関員をやっていて「危ないな」と思ったのが、出動して1〜2分の間、信号の色がぼやけて見えること。青が赤に見えたりするんです。胸がドキドキして、動悸がすごい。「あぁ、これは体に悪いな」と、はっきり実感していました。
消防士の平均寿命は短い、という話を聞いたことがあります。当時はその意味を、こういう瞬間にひしひしと感じていました。だからこそ、現役で頑張っている消防士のみなさんには、チームで上手に回し合いながら、少しでも体を休めてほしいなと思います。
これから目指す方へ。仮眠の実態は、消防本部ごとに違う
ここからは、ブログだからこそ書き足しておきます。
ここまで「仮眠は休みではない」と書いてきましたが、その”きつさ”の度合いは、消防本部によってかなり変わります。
僕自身、2〜3年目までは徹夜同然の夜がありましたが、署が機関員を順繰りに回す体制に変えてから、そこまでのことは起きなくなりました。仕組みで変わる部分が、確実にあるんです。
だから、これから受験する方には、説明会や面接の場で次の3つを聞いてみてほしいと思います。
- 年間の出動件数と、隊あたりの管轄範囲。ここが仮眠の中断回数を決めます
- 機関員をどう回しているか。一人に固定されている署は、その人の消耗が大きくなります
- 仮眠時間の設定と、明け(非番)の扱い。召集がどれくらいの頻度であるか
- 消防士は本当に楽な仕事か。休みは多いが1日は濃い
待遇や給料は募集要項に書いてありますが、この3つはたいてい書いてありません。 でも、入ってからの生活の質を決めるのは、むしろこちらのほうです。
愛知県で受ける方へ。どの消防本部を受けるかで、試験も、入ってからの環境も変わります。どこを受けるべきかは、実名を出さないと意味のない話なので、有料の記事にまとめました。
▼受けるなら、ここだと思う5本部
愛知県で本当に受けるべき消防本部、元消防士が実名で5つ選びました
▼逆に、僕ならすすめない5本部
愛知県で受けない方がいい消防本部、元消防士が実名で5つ書きました
若手の方へ。それができたら、胸を張っていい
最後に、今まさに現場にいる新人・若手の方へ。
もし、あの「ブツッ」という音で起きられるようになったなら。それは、一流の証です。
寝ている間も出動を意識できている、ということですから。どうか胸を張って、これからも頑張ってください。
そして、消防士以外の方にも一つだけ。仮眠時間は、休んでいるように見えて、休んでいません。あの24時間は、まるごと拘束されている時間なんです。
そこだけ、知っておいてもらえたら嬉しいです。
よくある質問
Q. 消防士の仮眠時間は、勤務時間に含まれるのですか?
A. 制度上の扱いは自治体の規程によりますが、実態として「休んでいる時間」ではありません。指令が鳴れば即座に出動しますし、眠っていても意識は仕事モードのままです。制度上の区分は、志望する消防本部にご確認ください。
Q. 「ブツッ」で起きられるまで、どれくらいかかりますか?
A. 僕の場合は3年目以降でした。1〜2年目は指令音が鳴ってから起きていました。夜間の出動をこなしていくうちに、体が勝手に拾うようになります。焦って身につけるものではありません。
Q. 仮眠でしっかり眠れれば、疲れは取れますか?
A. 同じ6時間でも、仮眠と休日の睡眠では回復量がまったく違いました。出動が一件もなくても、日中の訓練と出動で体はすでに疲れていますし、「これから出動があるかも」と思って眠るので、睡眠の深さが違います。
Q. 消防士は当務中どうやって眠気を抑えているの?
A. 個人でできる決まった対策はありません。指令が鳴れば眠くても出動するしかない。乗り切れるのは、隊の中で運転を交代するなど「チームで負担を回し合っている」からです。
Q. 一番眠くなるのはいつ?
A. 出動中はアドレナリンで頭が冴えるため、あまり眠くなりません。一番眠気が来るのは出動が終わった後、帰署途中の車内です。事故が多いのも、出動直後と帰署の途中です。
Q. 仮眠から出動するコツは?
A. 「とにかく早く動く」ことです。眠い・だるいと思う前に体を動かし、装備を誰よりも早く整える。ベテランでも仮眠中の出動は苦手な人が多いので、意識的に動くことが覚醒への近道です。
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最後まで読んでいただきありがとうございました。
元消防士のトラックドライバー🧑🚒🚚


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