💡 この記事でわかること
- 緊急走行の法律上のルール(速度・赤信号・進路を譲る義務)を条文つきで
- 機関員が赤信号で見ている「確認の順番」
- 一般ドライバーがやりがちな、かえって危ない譲り方
- 渋滞のときに緊急車両が通れる止まり方(図解あり)
今回は「緊急走行」というテーマで、元消防士として本音で書いていきます。
僕は5年半、消防士として勤めました。そのうち3〜4年は機関員、つまり消防車と救急車を運転する側にいました。今はトラックドライバーをしています。
意外と知られていないことを先に書いておきます。救急車を運転しているのも、消防士です。
緊急走行の速度は何キロ?法律で決まっています
まず、法律のところから整理します。ここは僕も現役のころ、正確には把握していませんでした。
| 項目 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 最高速度(一般道) | 時速80km | 道路交通法施行令 第12条第3項 |
| 最高速度(高速本線) | 時速100km | 同 第27条第2項 |
| 赤信号 | 停止義務は免除。ただし他の交通に注意して徐行する義務がある | 道路交通法 第39条第2項 |
| 一般車が譲る義務 | 交差点付近=交差点を避け左に寄せて一時停止/その他=左に寄せて進路を譲る/一方通行で左が妨げになるときは右に寄せる | 道路交通法 第40条 |
ここで大事なのは、免除されているのは「止まる義務」であって、「安全確認」ではないということです。条文にわざわざ「注意して徐行」と書いてあります。
そして、一般車が進路を譲るのはマナーではなく義務です。怠れば違反になります。
救急車・消防車の緊急走行、現場の本音
赤信号を突っ切ってくる救急車は、危ないです
ここからは現場の話です。正直に書きます。
たまに、赤信号を突っ切ってくる救急車がいます。 いるんです。あれは非常に危ない。
たとえ矢印信号が出ていたとしても、あまり良くないと思っています。本当に矢印が出ていて、そのうえで徐行するなり一時停止するなりして進む。そこまでやって、ようやく安全だと思います。
これから機関員になる方へ。大事なことは3つです。まずは落ち着くこと。とにかく安全運転。そして、赤信号は一時停止するくらいの勢いでいい。
なぜ1秒でも早く行きたいのか
1秒早く着けば、それだけ早く現場の活動方針が立ちます。そこから先の活動すべてに響いてきます。
現場は一分一秒を争います。一刻も早く向かいたいという気持ちは、機関員なら誰でも持っています。ただ、その大前提として安全に運行する必要があります。ここが崩れたら本末転倒です。
緊急走行では、普段の運転がそのまま出ます
安全確認うんぬんの話ではありません。ハンドルさばき、アクセルとブレーキの加減。 そういう、無意識にやっているところが出ます。
しかもそこを意識すると、今度は安全確認のほうがおろそかになる。経験の浅い機関員は、どこかに集中すると必ず何かがおろそかになります。
加えて、運転席の横には隊長が座っています。後ろには隊員、救急なら傷病者もいます。隊長は横からズバズバ言ってきます。「ここ通れ」「次の交差点、信号が短いから気をつけろ」。
隊長は活動すべての責任を持っているので当然ですが、言われる側には負荷になります。怖い人、うるさい人だと、余計にプレッシャーがかかる。 緊張した状態で運転すると、変なところでブレーキを踏んだりします。
傷病者によって、運転を変えます
傷病者の状態によって、運転の仕方がまったく変わります。
事故で足を怪我している方。脊柱の損傷が疑われる方。こういう方には丁寧な運転を心がけないといけません。
理由は救急車の揺れです。揺れがそのまま患部に伝わって、痛みにつながってしまう。
事故なく病院に送り届けるのは当たり前として、傷病者の状態を悪化させない。 ここも運転の仕事のうちです。
赤信号での「確認する順番」は決まっています
これは、あまり教える人がいないところだと思います。僕も最初は知りませんでした。
赤信号で交差点に進入するとき、確認する順番があります。
左の歩行者 → 右の歩行者 → 右の車両 → 左の車両 → 左の歩行者 → 右の歩行者
声に出しても構いません。この順で確認していきます。
なぜ順番を決めるのか。無駄な確認が減るからです。
順番が決まっていないと、左を見て、右を見て、また左を見て、右の車両を見て、左の車両を見て、もう1回右の車両を見て……となります。僕自身、現役のころは無駄に確認してしまうことが多いなと思っていました。
一分一秒を争う中で、余計な判断にリソースを割くのはもったいない。 順番を決めておくだけで、そこが減ります。
これは乗用車でもトラックでも応用が効きます。信号のない交差点はまさにそうです。確認する順番なんて、教習所でも教わりませんでした。
機関員が覚えること|病院の入り口と住宅街
救急車の機関員は、病院の場所と入り口まで覚えます
今はナビがあるので、知らない病院でも行けます。行けるのは当たり前です。
そのうえで、救急の入り口がどこにあるかまで把握して、そこへスムーズに着ける。これも機関員の能力だと思っています。
よく行くのは市民病院やERのある病院ですが、容体によってはかかりつけに搬送することもあります。30〜40キロ離れた病院に行くことだって、なくはありません。
行く可能性のある病院は、救命士や隊員の先輩が知っています。聞いておくといいと思います。
消防車は、あの狭い住宅街に入っていきます
火災はほとんどが住宅火災です。つまり現場は住宅街です。
住宅街の道は狭い。トラック一台通れるか通れないかという道を、あの大きな車で操って入っていかないといけません。ポンプ車、タンク車、大きいところでははしご車。大概が大きなトラックです。
だから消防車の機関員は、まず運転技術。そのうえで次のことを覚えます。
- 地理。道を覚える
- 消火栓の位置。水利がどこにあるか
- 消防車が通れない道。そして、そこを迂回するルート
通れない道を知っているだけでは足りません。迂回ルートを自分の中で確立しておく必要があります。
緊急車両への道の譲り方|無理に対向車線へ出なくていい
ここからは一般ドライバーの方へのお願いです。機関員をやっていた身として書きます。
緊急車両が来たら、必ず止まって道を譲ってほしいです。 左側に寄せて止まる。教習所で習ったあのルールを守ってもらえれば十分です。
そのうえで、逆のお願いもあります。無理をして譲る必要はありません。
信号待ちで詰まっているとき、慌てて前に出て対向車線まではみ出して譲ろうとする方がいます。あれは危ないです。 対向車が来ている可能性があります。
3車線あって右が右折レーン、左の2車線が詰まっている。そういう場面でも無理に動かなくて大丈夫です。僕らは右折レーンから抜けていくこともあります。 対向車線に僕らが出て、対向車が気づいて止まってくれたらそこを行くこともあります。状況に応じて動きます。
一番ありがたいのは、その場で止まっていてくれることです。動かないこと。
無理をして譲ろうとしてご自身が事故を起こしても、僕らは責任を取れません。 法律の範囲内で左に寄せる。それで十分です。
渋滞のときは、こちらからアナウンスします
渋滞で詰まってしまった場合、僕らはサイレンを消して、前が進んだら進むという形を取ります。
無理に左右に寄せようとして縁石や看板にぶつけてしまう。それは避けていただきたいです。
近いところからアナウンスします。「信号が青になりましたら進んでください」と、こちらから声をかけます。
渋滞中に緊急車両が通れる止まり方【図解】
これは知っている方が少ないと思うので、図にしました。
渋滞で止まるとき、左車線の車と右車線の車が横に並んで止まってしまうことがあります。これをやられると真ん中に隙間ができません。
そこで、互い違いに止まってもらう。 左車線の車と右車線の車の位置を前後にずらす。そうすると隙間がつながって、僕らはそこを抜けていけます。
この記事では分かりやすく「抱き合わせ」と書きますが、消防でそう呼んでいるわけではありません。要するに前後にずらして止まるということです。

譲る気のないドライバーも、います
最後に、これも正直に書きます。本当に、道を譲らない方もいます。
緊急車両が来ているのに普通に右折していく。止まらずに並走してくる。
急いでいる方がいるのはわかります。だから一概に「止まれ」とも言えません。ただ、多少スピードを緩めるだけでもいい。譲る動作をしてくれるだけでもいい。
そこがないと、こちらは安全が確認できません。安全が確認できないと、前に行けないんです。 結果として、現場に着くのが遅れます。
機関員には、向き不向きがあります
これから目指す方へ。機関員は、向き不向きが確実にあります。
まず深視力検査です。ここで引っかかるとトラックが運転できません。深視力はバックしたときの距離感覚に関わります。ミラーを見て、あとどれくらいでぶつかるのか、ぶつからないのか。あれは深視力の話です。
そして単純に運転の上手い下手もあります。自信がない方は、慣れるまでが本当に長いと思います。逆に、運転が好きで得意な方はぜひやってみてほしいです。
緊急走行についてよくある質問
Q1. 救急車は赤信号でも止まらなくていいのですか?
停止する義務は免除されますが、「他の交通に注意して徐行しなければならない」と条文に書かれています(道交法第39条第2項)。免除されているのは止まる義務であって、安全確認ではありません。元機関員としては、赤信号は一時停止するくらいでちょうどいいと思っています。
Q2. 緊急車両に道を譲らないと違反になりますか?
なります。道路交通法第40条で定められた義務です。マナーではありません。交差点付近では交差点を避けて左に寄せて一時停止、それ以外では左に寄せて進路を譲ります。
Q3. 渋滞で動けないときはどうすればいいですか?
無理に動かないでください。 緊急車両側はサイレンを消して、前が進んだら進む形を取ります。必要なら車内アナウンスで指示します。多少寄るだけで通れるなら寄せてもらえると助かりますが、縁石や看板にぶつけてまで寄せる必要はありません。
車両も管轄の広さも、本部ごとに違います
ここまで書いたのは、僕がいた一つの本部での話です。
どんな車両を持っているか。はしご車があるかどうか。管轄がどれだけ広いか。覚える道と病院がどれだけあるか。本部が変われば、まったく変わります。
僕は同じ愛知県内の本部を実名で比べた記事を、noteで有料公開しています。無料の記事で本部の中身までは書けないので、そちらにまとめました。
▶ 愛知県で本当に受けるべき消防本部、元消防士が実名で5つ選びました(note・有料)
▶ 愛知県で受けない方がいい消防本部、元消防士が実名で5つ書きました(note・有料)
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▶ 消防の機関員とは?運転だけじゃない役割と、なるまでの順番
最後まで読んでいただきありがとうございました。
元消防士のトラックドライバー🧑🚒🚚


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