救急車がなかなか出発しない理由は?元消防士が解説する病院選定・受け入れ拒否・搬送拒否

救急車がなかなか出発しない理由は?元消防士が解説する病院選定・受け入れ拒否・搬送拒否 消防士のリアル

💡 この記事でわかること

  • 救急車が患者を乗せたのに、なかなか出発しない理由
  • 病院選定の流れ(指令員が先に取る場合・救急隊が現場で取る場合)
  • 病院に断られる・たらい回しになる仕組み
  • 搬送拒否や、孤独死の現場で警察を待つケース

今回は「救急車が、なかなか出発しない理由」というテーマで書いていきたいと思います。

僕は5年半、消防士として勤めたあと、今はトラックドライバーをしています。

救急車が来て、患者さんを乗せたのに、なかなか出発しない。そんな救急車を見たことがある方もいると思います。

なぜなのか、元消防士として解説していきます。

結論:救急車が出発しないのは、ほとんどが病院選定

先に結論から書きます。

救急車がなかなか出発しない理由は、ほとんどが病院選定に時間がかかっているからです。

もしくは、患者さん本人が病院に行くかどうか迷っている。これが主な理由です。

重い症状なら、指令員が病院を先に取っておく

重篤な事案であれば、あらかじめ病院を取っておきます。

行き先は、救命救急センター。三次救急と呼ばれる病院です。先に取っておけば、病院へスムーズに運べます。

病院を先に取るのは、通信指令員がやってくれる場合がほとんどです。119番通報を受けた段階で、症状によって病院を取っておいてくれます。僕のいたところでは「事前管制」と呼んでいました。

指令の段階では、ほかにも、救急車とポンプ車を同時に出す「PA連携」も、指令員がやってくれます。

救急隊が、現場で病院を取ることもある

もう一つ、救急隊が自分たちで病院を取るパターンもあります。僕のいたところでは「隊管制」と呼んでいました。

僕らも、よくやりました。

最初はそこまで重い事案ではないと思って呼ばれて、行ってみたら、かなり重い症状だった。そういうときは、現場で病院を取ります。

たとえば家に呼ばれた場合なら、救急車に乗せている間に、もう病院を取ってしまう。現場に着いて、バイタルを測ったらすぐ、その場で病院を取ってしまう。そういうやり方もあります。

ここは、隊によって違うと思います。

理由① 病院に受け入れを断られる

なかなか出発しない一番の理由は、病院に断られることです。

症状やバイタルなどを聴取して、これは重くないな、という場合。そういうときは、病院に断られてしまうことがあります。

まずは三次救急の病院に電話することが多いのですが、病院によって得意な分野があります。脳の病気に強い病院、心臓や血管の病気に強い病院。それぞれ個性があって、強みが違います。

なので、「この症状だったら、うちでは受け入れられないよ」ということもあります。

電話をかけても、ほとんど断られてしまう。病院を何度もたらい回しにされる、というニュースをよく聞きますよね。それです。

これが、救急車がなかなか出発しない原因のほとんどを占めています。

中には、「これくらいだったら自分で来なさいよ」という雰囲気を出してくる病院もあります。

本当に症状が軽い場合は、近くの市民病院や、私立病院に運びます。何でも受け入れてくれる私立病院もあって、公立病院とは違う良さがあります。

理由② タクシー代わりに呼ばれる

これは、以前書いたタクシー代わりの救急車の話にもつながります。

たとえば、生活保護を受けている方は、医療費がかかりません。そういう方の中には、自分で病院に行こうとせず、救急車を呼ぶ方がいます。

持病がある場合は別です。でも、持病も特にないのに、救急車をタクシー代わりにして病院に行こうとする方も、中にはいます。

症状が軽いので、病院にも断られやすい。これも、出発に時間がかかる理由になります。

理由③ 本人が搬送を拒否している

本人が、搬送をあまり望んでいない場合もあります。

こちらとしては運んだ方がいいと判断しているのに、本人が搬送を拒否している。

手足に力が入っていない。ろれつも回っていない。これは脳の病気を疑っている、という場合でも、本人が「俺はいい」と強く拒否してしまうことがあります。

家族が「様子がおかしい」と通報してくれて、家族も運んでほしいと言っている。それでも、本人が強く拒否してしまう。家族と連絡がつかない場合もあります。

こちらとしては、搬送したいと強く伝えます。でも、なかなか応じてもらえないこともあります。

本人が搬送を拒否すると、こちらとしても運べません。あくまで、本人の意思を尊重するからです。

なので、もし救急隊から「これは運ばないと危ないですよ」と言われたら、ぜひ運ばせてください。

運んでほしくない気持ちがあったとしても、救急隊は、たくさんの患者さんを見てきたうえで、危ないと思ったから言っています。応じていただけると、本当に助かります。

理由④ 警察の到着を待っている

もう一つの理由は、孤独死などの現場です。

一人で亡くなっていた方や、家族の通報で行ったら、もう死後硬直が始まっていて、社会死の状態だった場合。そういうときは、警察に引き継ぐ必要があります。

警察に引き継いだあとなら、僕らは帰れます。

ただ、孤独死や社会死の事案では、警察はなかなか早く来てくれません。

これは、しょうがないことだと思っています。事故や事件のような緊急の事案なら、すぐに出発します。でも、緊急性のない事案では、装備を整えて、人員も整えてから来る。それが最善だと思います。

30分、1時間待ちは、ざらにあります。

それでも、一度は事案を完結させないといけません。引き継ぎもあるので、救急車は残っておかないといけない。

これも、救急車がなかなか出発しない理由の一つです。

事情があることを知ってもらえると助かる

救急車がなかなか出発しないのには、こういう事情があります。

それを理解していただけると、救急隊の方にとっては、すごく助かると思います。

▼タクシー代わりの救急車の話は、こちらに書きました

救急車をタクシー代わりに使う人はいる?元消防士が語る不搬送と適正利用の本音

▼孤独死の現場で、警察官に引き継いだときの話です

孤独死の現場で救急隊と警察は何をする?元消防士が見た実体験と警察官の仕事

▼社会死の判断については、こちらです

社会死の6項目とは。救急隊が搬送できない基準と、現場の本音

よくある質問

Q1. 救急車がなかなか出発しないのは、なぜですか?

ほとんどは、病院選定に時間がかかっているからです。症状が重くないと判断されると、病院に断られることがあり、何度も電話をかけ直すことになります。

Q2. 病院は、どうやって決めているのですか?

重い症状なら、119番を受けた通信指令員が先に救命救急センター(三次救急)を取っておくことがほとんどです。現場で重いとわかった場合は、救急隊が自分で病院を取ります。

Q3. 救急隊に「運んだ方がいい」と言われても、断れますか?

本人が拒否すると、救急隊は運べません。ただ、救急隊はたくさんの患者さんを見たうえで危ないと判断しています。言われたら、ぜひ運ばせてください。

Q4. 救急車が来たのに、そのまま帰らないのはなぜですか?

亡くなっていて社会死の状態の場合は、警察に引き継ぐ必要があります。警察の到着まで30分、1時間待つこともあります。

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最後まで読んでいただきありがとうございました。

元消防士のトラックドライバー🧑‍🚒🚚

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