フラッシュオーバーの現場でパニックになった日|小さい消防本部の消防力の現実を元消防士が語る

フラッシュオーバーの現場でパニックになった日|小さい消防本部の消防力の現実を元消防士が語る 消防士のリアル

💡 この記事でわかること

  • フラッシュオーバーの現場で、ベテランが面体もつけずに飛び込もうとした話
  • 本来取るべき「検索隊形」と、パニックで基本が消える怖さ
  • 小さい消防本部と大きい消防本部で、消防力がどう違うか

今回は「小さい消防本部の消防力の弱さを実感した話」というテーマで、元消防士として本音で書いていきたいと思います。

僕は5年半、消防士として勤めたあと、今はトラックドライバーをしています。

以前、同僚2人がフラッシュオーバーに巻き込まれた日のことを書きました。今回はその補足です。人間はパニックになると、本当に基本すらできなくなる。そして、そのとき組織の力がそのまま出る。そういう話をさせてください。

あの日、何が起きたか

詳しくは前の記事に書いたので、ここでは短くまとめます。

火災現場でフラッシュオーバーが起きました。同僚2人が巻き込まれました。

1人は、2階の床が抜けて1階に落下し、助かりました。

そして、その人から「中に、まだ1人取り残されている」と報告がありました。入って1年目の後輩です。

その瞬間から、現場は大パニックになりました。

小隊長が、面体もつけずに入ろうとしました

ベテランの小隊長が、面体もつけずに、そのまま1人で中に入ろうとしました。

僕は、それを止めるのに必死でした。

この小隊長、かなり体格がいい人です。行こうとするのを、僕の力でなんとか押さえつけていました。

無線もほとんど飛び交いませんでした。現場の人間が、現場でなんとかしようとしている。1秒でも早く中に入って助ける。それしか頭にない状態でした。

助けたいと思うのは当たり前です。誰もがそう思っていました。

本来は「検索隊形」を取ります

ただ、こういうときに取る形は決まっています。検索隊形です。

訓練どおりなら、こうです。

・バディを組む

・検索ロープを設定して、必ず戻ってこられるようにする

・筒先を持って進入する

・左右どちらかの壁に手をつけて、壁伝いに進む

そうやって進入して、要救助者を見つけたら、外まで連れ出す。

これが基本です。消防士なら、絶対に頭に入っています。僕ですら入っています。

それが、できませんでした。

後輩が出てきてくれなかったら

結果から書くと、取り残されていた後輩は、自力で玄関の方まで出てきてくれました。

勇気を振り絞って、出てきてくれた。本当に助かりました。

でも、もし後輩が中で倒れたままだったら。

小隊長は、1人で中に入っていたことになります。

フラッシュオーバーが起きた直後の建物に、1人で。検索ロープもない。筒先もない。熱気をまともに受ける。しかも、床はすでに1か所抜け落ちています。

床を踏み抜いて落ちて、そこから抜けられなくなる。中の燃焼が激しくて、一酸化炭素を吸って倒れる。どちらも、十分にあり得たと思います。

二次災害は、まず間違いなく起きていた。僕はそう考えています。

指揮命令系統が、機能していませんでした

今思えば、指揮命令系統がまったく機能していませんでした。

本来なら、指揮をとる人が「検索隊形を取れ」と命じる場面です。小隊長自身も、本当はそう判断しないといけない立場でした。

頭にはあったはずです。絶対に。

それでも、パニックになると、そうなってしまう。

そして、周りの反応も遅かった。ワンテンポ遅れていました。後輩は出てきてくれましたが、そのワンテンポのせいで、小隊長が中に入っていた可能性は十分にありました。

本当に怖いと思いました。パニックが、組織全体の動きを止めてしまう。それを目の前で見ました。

小さい本部ほど、一人一人の力が大事です

小さい消防本部は、そもそも人数が多くありません。

だからこそ、一人一人の力がものすごく大事になります。大きい消防本部よりも、一人一人が自分を磨かないといけない。

なのに、「うちは小さいから」という空気がある。

そういう本部で、いざ少ない人数で動かなきゃいけない場面になると、ワンテンポ遅れる。パニックになったときに、基本どおりに動けない。

あの日の現場は、まさにそれでした。

今でも、思い出すと動悸がします

仲間が中で倒れているかもしれない。本当に死ぬかもしれない。そういう状況でした。

今でも思い出すと、脈が速くなります。動悸みたいなものが来ます。

本当に、生きていてよかったと思います。

ああいう、生きるか死ぬかの場面でこそ、その消防本部の実力が出る。僕はそう感じました。

大きい本部なら、違ったと思います

これが、名古屋市や豊田市のような大きい消防本部だったら、絶対に違う対応をしていたと思います。

人も足りているはずです。そもそも、フラッシュオーバーが起きそうな状況で、中に入らせなかったかもしれません。

ただ、そこはわかりません。当時の細かい状況まで覚えていないので、断言はできません。

前兆はあった、とベテランの方があとで言っていました。

大きい本部ならパニックへの対応が全部できている、とも言い切れません。ただ、少なくともあの日の僕がいた現場には、パニックになったときの対応のノウハウが、まったく積み上がっていなかったと思います。

働いている人には申し訳ないですが

これは、本音で書きます。今、小さい本部で働いている人には申し訳ないです。

田舎の消防であればあるほど、自分の命は自分で守る。その意識を、一人一人がより強く持っていないといけない。

大きい本部なら安心、という話ではありません。ただ、小さい本部ほど、組織が自分を守ってくれるとは思わない方がいい。あの日、僕はそう思いました。

一般の方へ。住む場所の消防力を見ておくといいと思います

ここからは、一般の方に向けて書きます。

大きい市でも、小さい町でも、火事は火事です。一般住宅の火事でも同じです。

でも、あまり知られていませんが、最初の出動で来る消防車の台数は、本部によって全然違います。

大きい本部は、かなりの台数が出ると思います。小さい本部では、出せる車両がそもそも限られています。

救急車が何台も出てしまうと、署に人がいなくなる本部もあります。そうなると隣の市から来てもらうことになりますが、どうしても到着は遅くなります。

引っ越しで住む場所を決めるとき、消防力の強さ弱さを見る人は、まずいないと思います。それでも、そこを少し見ておくと、万が一のときに違いが出るかもしれません。

ちなみに、いくつかの市町がまとまった広域の消防本部は、市をまたいで動くので、この話とは少し事情が違います。

消防力は、本部ごとに違います

消防力の強さ弱さは、本部ごとに確かにあります。

人数、車両、組織の総合力。その市がどれだけ消防に力を入れているか。それで、まったく変わってきます。

残酷な現実ですが、これが本音です。

これから消防士を目指す人は、どこを受けるかで、自分の命の守られ方まで変わる。そこまで考えて選んでほしいと思います。

本部ごとの違いは、実名を出さないと意味のない話です。なので、有料の記事にまとめました。

▼フラッシュオーバーの日のことは、こちらに書きました

同僚2人が、フラッシュオーバーに巻き込まれた日。元消防士が忘れられない、火災現場のリアル

▼火災の件数については、こちらです

消防士は火災に何回出動する?元消防士が5年半で10件ほどだった理由と若手の経験不足

▼受けるなら、ここだと思う5本部(note・有料)

愛知県で本当に受けるべき消防本部、元消防士が実名で5つ選びました

▼逆に、僕ならすすめない5本部(note・有料)

愛知県で受けない方がいい消防本部、元消防士が実名で5つ書きました

よくある質問

Q1. 検索隊形とは何ですか?

建物内で要救助者を探すときの基本の隊形です。バディを組み、検索ロープで退路を確保し、筒先を持って、左右どちらかの壁に手をつけて壁伝いに進みます。

Q2. 小さい消防本部は危ないのですか?

人数や車両が限られるため、いざというときの動きがワンテンポ遅れやすいと感じました。だからこそ一人一人の力と、自分の命を自分で守る意識が大事になります。

Q3. 住む場所の消防力はどう見ればいいですか?

最初の出動で来る消防車の台数や、救急車の台数、署の配置は本部によって違います。引っ越しのときに少し気にしておくと、万が一のときに違いが出るかもしれません。

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最後まで読んでいただきありがとうございました。

元消防士のトラックドライバー🧑‍🚒🚚

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