💡 この記事でわかること
- 孤独死の現場で、救急隊と警察官がそれぞれ何をするのか
- 孤独死の通報がどう始まり、救助隊がどうやって部屋に入るのか
- 元消防士が実際に見た、孤独死の現場2件
- 救急隊が引き継いだあと、警察官に待っている仕事(検視・搬送)
- 消防と警察、どちらがきついのか
※ご遺体の状況について、具体的な描写があります。苦手な方はご注意ください。
今日は「孤独死の現場と、警察官という仕事」というテーマで話していきたいと思います。
以前、「死後硬直を確認した瞬間、少しホッとしてしまう話」という記事を書きました。
そこに、おそらく元警察官の方だと思うのですが、こんなメッセージをいただきました。
「不搬送の指令が入った瞬間に、『終わった』と思ってしまう」
これを読んで、ハッとしました。
僕ら救急隊にとって、不搬送は「そこで一区切り」です。でも警察官にとっては、そこからが仕事の始まりなんです。
いくつもの孤独死の現場を思い出して、あらためて「警察官は本当にきつい仕事だな」と思いました。今回はその話を書きます。
孤独死の現場で救急隊がすること|社会死なら不搬送で警察へ引き継ぐ
まず、救急隊の側から書きます。
以前の記事にも書いた通り、社会死の基準をすべて満たしていれば、救急隊は不搬送とします。そして現場を警察官に引き継ぎます。
僕らの仕事は、ここで終わりです。帰署して、次の出動に備えます。
まだ亡くなってから時間が経っていないご遺体であれば、状態もきれいです。それでも、警察官の仕事はここから始まります。
警察官は何をする?検視・事情聴取・ご遺体の搬送
警察官は、そこから何をするのか。
- ご遺体を確認する
- ご家族や関係者、通報者から話を聞く
- ご遺体を部屋から出して、運ぶ
事件性がないと言い切れない以上、他殺の可能性も含めて調べなければいけません。
調べてみると、変死やその疑いがあるご遺体は、刑事訴訟法にもとづいて検視が行われます。本来は検察官の仕事ですが、警察官が代わりに行うことが多いそうです。そして犯罪の疑いがあれば、司法解剖に回されます。
これが、夏場だったら。死後何日も経っていたら。
それでも、きちんと運ばなければいけません。 相当しんどい仕事だと思います。
僕がそう思うのは、そういう現場を実際に見てきたからです。
孤独死の通報はどう始まる?「異臭」「郵便物が溜まっている」安否確認
僕が初めて孤独死の現場に行ったときの話です。
アパートの住人から通報がありました。「ものすごい臭いがする」。 管理人さんからも連絡があり、新聞受けには郵便物が溜まっている。連絡もつかない。
「安否確認をしてほしい」という内容でした。
もしかしたら中で倒れているかもしれない。そこで救急隊と救助隊が出動しました。僕はそのとき、救急隊員として出ています。
現場は2階の部屋でした。当然、玄関は開きません。
破壊は最小限にするのが原則です。救助隊は3連はしごをベランダにかけて登り、窓ガラスにテープで養生をしてから割り、鍵を開けて中に入りました。
孤独死の現場の臭いとは|階段の下から分かる異臭
救助隊が中から玄関を開けてくれて、「意識なし」の無線を受けて、僕らは入っていきました。
でも実は、アパートの1階の階段のところから、すでにとんでもない異臭がしていたんです。
どう表現したらいいのか。
海に行くと、ときどき魚が死んで打ち上がっていますよね。あの臭いを、何倍にも強くしたような臭いです。それがアパート中に充満していました。
えずきが止まりませんでした。 吐きそうになりながら、現場に近づいていきました。
そして部屋を開けた瞬間、とんでもない臭いでした。
ずっと口で呼吸をしていたんですが、それすら気持ち悪い。暑くなりかけの時期で、部屋の中は生ぬるい。その生臭さが、口呼吸を通して伝わってくるんです。
ゴミ屋敷の奥で、犬が吠えていた
部屋の中は、いわゆるゴミ屋敷でした。足の踏み場もあまりありません。
そして奥で、犬が1匹、ワンワンと吠えていました。 しっぽを振って、すごく元気でした。
その吠えている先に向かっていくと、男性のご遺体がありました。
体は形を残していました。ただ、顔、とくに目のあたりは、骨が見えるような状態でした。
これは推測ですが、飼い主さんが起きないので、犬がずっと顔を舐め続けていたのではないかと思います。
死斑も出ていて、明らかに社会死の状態でした。僕らは警察の方に引き継ぎました。
あの臭いと、あの光景は、今でも鮮明に覚えています。
玄関から赤黒い液体が染み出していた現場
もっとひどい現場も、ありました。
これも安否確認の通報でした。マンションの1階の部屋で、玄関のドアの下から、赤黒い液体が染み出てきているというものです。
中で事件が起きているかもしれない。消防と警察に、同時に通報が入っていました。
僕はこのとき、救助隊として出ています。
玄関も窓も、すべて鍵がかかっていました。仕方がないので、裏の窓ガラスを割って入ることになりました。
その窓が、少し高い位置にあったんです。一緒にいた先輩が小柄な方だったので、僕が土台になって、先輩を窓から中に入れました。
中に入った先輩から、無線が入りました。
「要救助者発見。明らかに社会死状態」
玄関を開けて救急隊に引き継ぎ、社会死と判断されて、警察へ引き継ぎました。僕は隊長の判断で、中には入っていません。
先輩から聞いた、中の状況
あとから先輩に聞いた状況は、こうでした。
首を吊った状態で、亡くなっていたそうです。
時間が経って腐敗が進み、縄が首に食い込んで、今にもちぎれそうな状態だった。そして体の下から、黒い体液が玄関いっぱいに溢れていた。
それが、ドアの下から外に染み出していたんです。
中に入っていない僕でも、外に漂っていた臭いは、あの一件目と同じ魚が腐ったような臭いでした。そしてそれよりも、さらにひどかった。
孤独死の現場には何度も行きましたが、臭いも、ご遺体の状況も、ここがダントツでした。
警察官に引き継ぐたびに思っていたこと
僕ら消防は、ここで引き継いで帰ります。
でも警察官は、このご遺体を運び出して、そこから検視までしなければいけない。
引き継ぐたびに、いつもこう思っていました。
「ああ、この人たちはこれからなんだな。大変だな」
今でも、本当にそう思っています。
警察官は嫌われやすい仕事|昔の僕もそっち側でした
世の中には、警察官を嫌う人が多いと思います。
「税金泥棒」と言われることもある。交通違反で捕まって、「いや、ちゃんと止まった」と押し問答になる。
正直に書くと、僕も昔はそっち側でした。
20代前半、スポーツカーに乗っていた頃に、スピード違反で捕まったことがあります。そのときは本当に、警察が憎く思えました。
でも、消防で働くようになって、現場で警察官の仕事を間近で見るようになって、考えが変わりました。
人を殺められる武器を持つ責任
もう一つ、警察官ならではの重さがあります。
凶悪犯と向き合えば、命の危険があります。
そして何より、人の命を奪うことができる武器を持っている。 その責任は、とてつもなく大きいと思います。
消防の仕事も、もちろん命に関わります。でも、この重さは種類が違います。
消防と警察、どっちがきつい?「消防は警察より100倍楽」について
以前、「消防は警察より100倍楽」というメッセージをいただいたことがあります。
百倍は、さすがに言い過ぎだと思います。
でも、消防は警察に比べたら、多少は楽だと思います。
今回のメッセージは、それを思い出させてくれました。僕らが「終わった」と思っている瞬間に、「ここからだ」と腹をくくっている人たちがいる。
そのことは、ちゃんと覚えておきたいと思います。
メッセージをくださった方、ありがとうございました。
よくある質問
Q. 孤独死の現場で、救急隊はご遺体を運ばないのですか?
A. 社会死の判断基準をすべて満たしている場合は、救急隊は不搬送とし、現場を警察官に引き継ぎます。ご遺体の搬送や検視は、そこから警察の仕事になります。
Q. 検視とは何ですか?
A. 変死やその疑いがあるご遺体について、犯罪によるものかどうかを調べる手続きです。刑事訴訟法にもとづき本来は検察官が行いますが、警察官が代わりに行うことが多くあります。犯罪の疑いがあれば司法解剖に回されます。
Q. 消防と警察では、どちらがきつい仕事ですか?
A. 仕事の種類が違うので一概には言えませんが、元消防士としての実感では、消防の方が多少は楽だと思います。警察官は現場を引き継いだあとの処理があり、凶悪犯と向き合う危険や、武器を持つ責任もあります。
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最後まで読んでいただきありがとうございました。
元消防士のトラックドライバー🧑🚒🚚


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