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💡 この記事のポイント
- 僕がいた消防本部は3交代制。丸1日働いて、2日休むサイクル
- 日中は訓練と資機材整備、そして地理の把握。夜は仮眠と、いつ鳴るか分からない指令
- 一番きついのは仮眠中の出動。最初の1分は、信号の色がぼやけて見える
- 当務明けの翌朝、新人はみんなの起床より早く起きて、シャッター・鍵・国旗・洗濯をこなす
今回は「消防士の1日は、実際どんな流れなのか」というテーマで、元消防士として書いていきたいと思います。
僕は5年半、消防士として勤めたあと、今はトラックドライバーをしています。
消防士を目指す方から、「消防士って、24時間どう過ごしているんですか」と聞かれることがあります。たしかに、外からはいちばん見えない部分だと思います。今回は、僕が新人だった頃の当務(24時間勤務)を、朝から翌朝まで順番にたどってみます。
最初にお断りしておくと、勤務体系や時間の刻み方は消防本部によってかなり違います。 ここに書くのは、あくまで僕がいた消防本部での話として読んでください。
まず、勤務のサイクルから
僕が所属していた消防本部は3交代制でした。簡単に言うと、丸1日働いて、2日休むというサイクルです。
こう聞くと、休みがものすごく多いように見えると思います。実際、僕もそこに惹かれて消防を受けた人間です。ただ、当務した次の日は「非番」といって、大規模な災害があれば召集がかかって出勤することになります。僕のいた本部は人手が少なかったので、召集はわりと頻繁にありました。
つまり、カレンダー上は休みでも、遠出はしづらいし、お酒も飲みにくい。ここは後半でもう一度触れます。
当務の始まり:車両点検、消防体操、そして弁当の注文
当務は、前の当務からの申し送りを受けるところから始まります。
朝はまず車両の点検から始まり、消防体操。この体操も、新人が一人で前に出て、見本として掛け声をやります。
引き継ぎが終わったら、先輩たちの弁当の注文を取ります。
「弁当の注文なんて」と思うかもしれませんが、これが意外と難しい。お釣り用の小銭を用意しておかないと、先輩にお釣りを返せません。しかも、出動が重なると注文そのものができなくなる。だから僕のいた消防本部では、お昼は各自の持参弁当か、出前で取る形にしていました。
笑い話のようですが、こういう小さな段取りの積み重ねが、新人の1日の大半を占めています。
日中:訓練と、資機材と、地理
日中は、訓練や資機材の手入れが中心になります。そして、これと並行して覚えなければいけないことが山のようにあります。
まず、隊の編成。火災のときはこの車両に乗る、この隊は救急の一次隊、火災ではこの車両に乗るけれどこのうち3人は二次で出る救急隊、ポンプ支援隊はまた別──。僕のいた本部は人数が少なくて一人がいくつも兼務していたので、最初は本当に意味が分からず、乗車するたびに先輩に聞いていました。
そして資機材の位置。一台の車両に積まれている資機材は、何百個という数です。新人に求められるのは「あれ持ってきて、これ持ってきて」に応えること。持ってこられない状況は本当に厳しいので、僕は死ぬ気で覚えました。
何より優先度が高いのが管轄の地理です。現場までどれくらいで着くのか、水利(消火栓や防火水槽)はどこにあるのか、目標物は何か。これを把握していない状態で現場に向かうのは、正直かなり怖い。僕は休みの日に、自転車や車で市内を回っていました。
日によっては、市内の公会堂や学校、企業に出張して普通救命講習を教えることもあります。これは面倒に見えて、実は一番やっておいてよかった仕事でした。
夕方:国旗を降ろし、鍵を回収する
夕方17時ごろ、今度は国旗を降ろして、車両の鍵を回収します。夜に鍵を差しっぱなしにしておくと、盗難の恐れがあるからです。
車両点検表を回収して、異常がなかったかをまとめて担当に提出するのも、新人の事務処理でした。
夜:仮眠と、いつ鳴るか分からない指令
夜になると仮眠の時間がありますが、当務中はまとまった睡眠を取る暇そのものがありません。
夜間に出動指令が入れば、いち早くシャッターを開ける。そのとき、出動車両の鍵の所在も把握しておく。これも新人の役割です。
そして、当務でいちばんしんどいのが仮眠中の出動です。完全に休んでいる状態から、一気に出動の覚醒状態まで持っていく。これは体にとって、ものすごい負担なんです。ベテランでも仮眠中の出動が苦手な人はすごく多い。それくらい切り替えが難しい。
僕自身、いちばん最初の出動のときは、指令音に気づかないくらい深く眠っていて、先輩に起こされて「え、今鳴ったんですか」となったことがあります。今思い出しても苦い記憶です。だから後輩には「最初のうちは、一人で寝ないようにな」と伝えていました。
覚醒のために僕が意識していたのは、とにかく早く動くこと。「あー眠い、だるい」と思う前に、バッと体を動かす。下に降りて、防寒衣を早く着る、感染防止衣を早く着る、出動場所が表示される画面に誰よりも早く行く。当たり前のことなんですが、いつもより早く動く勢いで装備を整える。それしかないんです。
意外なところ:一番眠いのは、出動が終わった後
意外かもしれませんが、現場に出ているうちは、正直あまり眠くなりません。出動中はアドレナリンが出て、戦っているような状態になる。どんどん頭が冴えてくるんです。
一番眠気が来るのは、その出動が終わった後です。救急なら、傷病者を病院に送り届けた帰りの車内。緊張がほどけて、気が緩む瞬間です。
そして、本当に怖いのはここからで、事故が多いのは出動した直後と、帰署の途中です。寝起きでボーッとしたまま運転していると、最初の1分くらいはサイレンの音も聞こえないくらいふわふわしている。機関員をやっていて「危ないな」と思ったのが、出動して1〜2分の間、信号の色がぼやけて見えること。青が赤に見えたりするんです。胸がドキドキして、動悸がすごい。
だから、小さな対策としては「暇があったら目をつぶる」。本当にそれだけですが、目をつぶるだけでも意外と回復します。
それでも回るのは、チームだから
ここまで読むと「そんな状態で仕事になるのか」と思われるかもしれません。乗り切れる理由は、はっきりしています。チームだからです。
救急なら3人、火災や救助なら3〜4人で活動します。だから、機関員(運転手)だけが眠くても、眠くない人に運転を代わってもらえる。救急だと「行きはこの人が運転、帰りは別の人」という形にして、その間に車内で軽く目をつぶることもやっていました。
僕がまだ1〜2年目で機関員ができなかった頃は、むしろ先輩のほうが気を使ってくれました。「まだ出動があるかもしれんから、後ろで寝てていいよ」と声をかけてくれたんです。隊はチームで動くもの。そのマネジメントの中で、僕は助けられていたなと思います。
翌朝:新人は、みんなの起床より早く起きる
そして翌朝。ここが、新人にとって1日でいちばん動く時間帯かもしれません。
みんなの起床(6時50分ごろ)より少し早く起きて、やることがあるんです。
- シャッターを開ける
- 車両に鍵を差しに行く
- 国旗を揚げる
- 署内のゴミを集めて片付ける
- 前日に出たタオルを洗濯する
- 前のグループが干した洗濯物を畳んで、食堂へ戻す
それから、起床の時点で夜間出動中の隊があれば、その隊の布団を畳んでおいてあげる。訓練で使ったホースは翌日に二重巻きにして収納しますが、それも若手が気づいて、みんなに声をかけて巻いてもらいます。
前の晩に出動が重なっていても、ここは変わりません。ほとんど寝ていない朝に、これを全部こなすことになります。
「消防らしい仕事」ではないと思われるかもしれません。でも、これをちゃんとやっていないと、次のグループに引き継いだときに「これ、やってないじゃん」と思われてしまう。だから手を抜けないんです。
そして「非番」へ
ひと通り終えたら、次のグループに申し送りをして、当務が明けます。
ただ、ここからが「非番」です。冒頭に書いたとおり、大規模災害があれば召集がかかります。それに加えて、行事がかなり多い。
- ホース格納箱の資機材の使い方の指導
- 消火器の使い方の指導
- 救命講習
- 他消防本部との合同訓練
- 市民への庁舎開放イベント
- 消防の機関員とは?運転だけじゃない役割と、なるまでの順番
- 消防士は本当に楽な仕事か。休みは多いが1日は濃い
半日から1日かかることもあり、しかも夜間に徹夜で出動していても関係ありません。 正直に言うと、僕はこの行事がめちゃくちゃ嫌いでした。「なんで休みの日に、しかもほぼ寝てないのに働くんだ」と思っていました。特に1〜2年目は、この多さにかなり戸惑いました。
「休みが多い」というのは本当です。でも、自由に使える休みが多いかどうかは、別の話だと思っています。
これから目指す人へ
ここまで書いてきたのは、あくまで僕が新人だった頃の1日です。年数が上がれば役割が変わり、雑務は減って、代わりに判断の責任が増えていきます。
そして念のため書いておくと、採用されてすぐこの1日が始まるわけではありません。 まずは消防学校(初任科)で半年ほど基礎を学びます。そこの1日はまた別物なので、興味があれば下の関連記事を読んでみてください。
読み返してみると、雑務ばかりの地味な1日に見えるかもしれません。でも僕は、この1日の積み重ねが嫌いではありませんでした。少なくとも、ここに書いたことは全部、誰かの命に届くための準備です。それだけは、胸を張って言えます。
よくある質問
Q. 消防士の勤務は、どこも24時間勤務なのですか?
A. いいえ。僕のいた本部は3交代制(当務・非番・休み)でしたが、勤務体系は消防本部によって違います。予防課や総務課のように、日勤中心の部署もあります。志望先の勤務形態は、募集要項や説明会で確認してください。
Q. 当務中、まったく眠れないこともありますか?
A. 出動が重なれば、まとまった睡眠は取れません。ただ、隊の中で運転を交代したり、先輩が休ませてくれたりと、一人に負担が偏らないよう回していく工夫はどこの署でも多かれ少なかれしていると思います。
Q. 新人のうちは、雑務ばかりなのでしょうか?
A. 体感としては、かなりの割合が雑務です。洗濯、国旗、鍵、ゴミ、弁当の注文まで含まれます。ただ、それと並行して隊の編成・資機材・地理を覚えていく必要があるので、暇なわけではまったくありません。
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最後まで読んでいただきありがとうございました。
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