💡この記事でわかること
- 愛知県の消防本部ごとの受験者数・合格者数・倍率(令和7年度を中心に)
- 消防士の倍率と、有効求人倍率1.18倍の比べ方
- 倍率を見るときに誤解しやすい3つのポイント
- 消防士の人気は上がっているのか、下がっているのか
今回は「消防士は本当に人気職業なのか」というテーマで、数字を使って話していきたいと思います。
僕は5年半、消防士として勤めたあと、今はトラックドライバーをしています。
「消防士は人気だから倍率が高い」とよく言われます。僕も前の記事で、10人が目指して受かるのは1人か2人という肌感覚を書きました。ただ、それは感覚の話です。今回は、愛知県の消防本部が公表している数字と、国が出している有効求人倍率を並べて、本当に人気なのかを確かめてみます。
愛知県の消防士採用試験の倍率は約5.5倍
消防士は、今でも人気職業です。ただし、10年前ほどではありません。
愛知県で令和7年度の結果が確認できた10の消防本部を合計すると、受験者922人に対して、最終合格者は167人でした。倍率は約5.5倍です。受けた人の5人に4人は落ちています。
一方で、世の中の仕事全体では、働きたい人1人に対して求人が1.18件あります。人より仕事のほうが多い状態です。
人が足りないと言われている今の時代に、1つの席を5人以上で取り合っている。それだけで、消防が人気のある仕事だということは言えると思います。
ここから、その理由を順番に書いていきます。
愛知県の消防本部別の倍率一覧【令和7年度】
愛知県には34の消防本部があります。そのうち、受験者数と最終合格者数を確認できた本部をまとめました。倍率は、すべて「受験者÷最終合格者」で計算しています。
令和7年度の結果が分かった本部(10本部)
| 消防本部 | 区分 | 受験者 | 最終合格 | 倍率 |
|---|---|---|---|---|
| 名古屋市消防局 | 第Ⅰ類 | 435人 | 94人 | 4.6倍 |
| 豊田市消防本部 | 大卒程度 | 189人 | 12人 | 15.8倍 |
| 豊田市消防本部 | 高卒程度 | 17人 | 2人 | 8.5倍 |
| 春日井市消防本部 | 高卒程度 | 9人 | 1人 | 9.0倍 |
| 小牧市消防本部 | 32人 | 4人 | 8.0倍 | |
| 豊川市消防本部 | 大卒程度 | 63人 | 12人 | 5.3倍 |
| 衣浦東部広域連合消防局 | 大卒程度 | 31人 | 10人 | 3.1倍 |
| 衣浦東部広域連合消防局 | 高卒程度 | 13人 | 2人 | 6.5倍 |
| 知多中部広域事務組合消防本部 | 大卒程度 | 33人 | 6人 | 5.5倍 |
| 知多中部広域事務組合消防本部 | 高卒程度 | 12人 | 7人 | 1.7倍 |
| 知多中部広域事務組合消防本部 | 救急救命士 | 12人 | 3人 | 4.0倍 |
| 江南市消防本部 | 2回の合計 | 25人 | 4人 | 6.3倍 |
| 蒲郡市消防本部 | 2回の合計 | 15人 | 3人 | 5.0倍 |
| 犬山市消防本部 | 2回の合計 | 36人 | 7人 | 5.1倍 |
10本部の合計は、受験922人→合格167人で、約5.5倍です。
人数の多い名古屋市を外すと、受験487人→合格73人で、約6.7倍になります。名古屋市より、ほかの本部のほうが入りにくいということです。採用人数が少ないぶん、倍率が上がりやすくなります。
令和6年度以前の結果しか分からなかった本部(7本部)
| 消防本部 | 年度・区分 | 受験者 | 最終合格 | 倍率 |
|---|---|---|---|---|
| 尾張旭市消防本部 | 令和5年度・大学 | 72人 | 1人 | 72.0倍 |
| 新城市消防本部 | 令和5年度 | 36人 | 7人 | 5.1倍 |
| 岩倉市消防本部 | 令和5年度・2回の合計 | 23人 | 4人 | 5.8倍 |
| 幸田町消防本部 | 令和5年度 | 16人 | 5人 | 3.2倍 |
| 東海市消防本部 | 令和4年度・短大卒以上 | 14人 | 3人 | 4.7倍 |
| 田原市消防本部 | 令和2年度 | 19人 | 2人 | 9.5倍 |
・津島市消防本部:令和2年度の倍率は約7倍とされていますが、人数の内訳は確認できませんでした
結果を確認できなかった本部(17本部)
岡崎市、一宮市、豊橋市、尾三、西春日井広域、西尾市、稲沢市、瀬戸市、海部東部、大府市、知多市、愛西市、丹羽広域、常滑市、海部南部、蟹江町、知多南部の各消防本部は、受験者数と合格者数を確認できませんでした。結果を公表していないか、公表していても見つけにくい場所にある本部です。
消防士は人気職業?有効求人倍率と比べてみる
結論から言うと、世の中の仕事は人より求人が多いのに、消防だけは1つの席を5人以上で取り合っています。
有効求人倍率は「仕事の数÷働きたい人の数」
まず、有効求人倍率の意味を整理しておきます。
有効求人倍率は、ハローワークに出ている求人の数を、仕事を探している人の数で割った数字です。
・1倍より大きい:人より仕事のほうが多い(働く側が選べる)
・1倍より小さい:仕事より人のほうが多い(会社側が選べる)
厚生労働省が2026年10月2日に発表した8月の有効求人倍率は、1.18倍でした。正社員に限ると1.00倍です。
1.18倍を言いかえると、仕事1件を0.85人で取り合っている状態です。普通の仕事は、取り合いにすらなっていません。
消防の倍率は「受けた人の数÷受かった人の数」
消防の採用試験の倍率は、受験した人の数を、最終合格した人の数で割って出します。
5倍なら、1つの席に5人が来ている。受かるのは5人に1人です。
有効求人倍率とは、割る数と割られる数が逆になっています。ここが大事なところです。有効求人倍率は「大きいほど入りやすい」。消防の倍率は「大きいほど入りにくい」。数字の向きが反対です。
2つの数字を並べると、消防は約6.5倍の競争
ここで、2つの数字を同じ向きにそろえます。
・世の中の仕事全体:仕事1件を0.85人で取り合う
・愛知の消防(令和7年度):1つの席を5.5人で取り合う
単純に割ると、消防は普通の仕事の約6.5倍、競争が激しいことになります。
ただし、この2つは作り方が違う数字です。有効求人倍率はハローワークの求人だけを数えた月ごとの数字で、消防の倍率は1回の試験の数字です。ぴったり比べられるものではありません。それでも、「人より仕事が多い世の中で、消防だけは人が余っている」という向きは、はっきりしています。
消防士の倍率を見るときの3つの注意点
数字だけを見ると、誤解しやすいところがあります。
同じ人が、いくつもの本部を受けている
消防を目指す人の多くは、いくつかの本部を併願します。A市を受けた人が、B市もC市も受けている。だから、倍率の合計ほど、消防を目指している人がいるわけではありません。
5.5倍だから「消防を目指す人の5人に1人しかなれない」とは限りません。何か所も受けて、どこかに受かる人もいます。
小さい本部は、1人で倍率が大きく動く
尾張旭市の72倍は、合格者が1人だった年の数字です。採用が2人なら36倍、3人なら24倍になります。
採用人数が少ない本部は、年によって倍率が何倍も変わります。1年分の数字だけを見て「ここは無理だ」と決めない方がいいと思います。
倍率は、人気だけでなく採用人数でも動く
名古屋市の第Ⅰ類は、平成25年度に受験662人→合格75人(8.8倍)でした。令和7年度は受験435人→合格94人(4.6倍)です。
受験する人は3割ほど減り、合格者は増えています。その結果、倍率は半分近くになりました。
反対に、豊田市の大卒程度は、平成25年度の6.3倍から、令和7年度は15.8倍に上がっています。受験する人が少し増えたうえに、合格者が22人から12人に減ったからです。
倍率が上がったからといって、人気が上がったとは限りません。採用人数が減っただけのこともあります。
消防士の人気は下がっている?倍率だけで受験先を決めない
名古屋市の数字を見ると、受ける人は10年前より減っています。それでも5人に4人は落ちる試験です。
人気は、少しずつ落ちている
名古屋市の数字で見ると、消防を受ける人は10年前より確実に減っています。
民間の仕事は、人が足りず、給料も上がってきています。昔ほど「安定しているから公務員」という時代ではなくなってきているのかもしれません。これは数字から読める範囲の、僕の考えです。
ただ、それでも5人に4人は落ちる試験です。人気が落ちたといっても、入りやすい仕事になったわけではありません。
受験生にとっては、10年前より少しだけ扉が広くなった今は、チャンスだと思います。
倍率だけで、受けるところを決めない
最後に、受験生の方に1つだけ伝えたいことがあります。
倍率は、受けるところを決める材料の1つでしかありません。去年の倍率を見ても、今年どれくらいの人が受けるのかは分かりません。
本当に大事なのは、どこの本部が自分に合っているかです。給料、休み、人間関係、出動件数。倍率よりも、入ってからの何十年を左右するものがあります。
愛知県の本部ごとの中身は、実名で別の記事にまとめています(noteの有料記事です)。
愛知県で本当に受けるべき消防本部、元消防士が実名で5つ選びました
愛知県で受けない方がいい消防本部、元消防士が実名で5つ書きました
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よくある質問
Q. 愛知県の消防士採用試験の倍率は何倍ですか?
A. 令和7年度の結果が確認できた10の消防本部を合計すると、受験者922人に対して最終合格者167人で、約5.5倍です。名古屋市を除くと約6.7倍になります。
Q. 有効求人倍率と消防士の倍率は、そのまま比べられますか?
A. ぴったりとは比べられません。有効求人倍率は「求人÷求職者」、消防の倍率は「受験者÷合格者」で、割る数と割られる数が逆です。向きをそろえると、仕事全体は仕事1件を0.85人で取り合い、消防は1つの席を5.5人で取り合っています。
Q. 倍率が高い本部は、受けない方がいいですか?
A. 倍率だけで決めない方がいいと思います。採用人数が少ない本部は、1人の差で倍率が何倍も変わります。去年の倍率を見ても、今年どれくらいの人が受けるのかは分かりません。
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【出典】
・厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年8月分)」(2026年10月2日公表)
・各消防本部の受験者数・最終合格者数は、各本部の公表値をまとめた「消防士になる〜合格への道〜」(shouboushi.com)の掲載値をもとに、倍率を「受験者÷最終合格者」で計算し直しました。豊田市は市の公表値と一致することを確認しています
・本部によって、倍率を申込者数で計算している場合があります。この記事の数字と、各本部の公表値が少し違うことがあります
最後まで読んでいただきありがとうございました。

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