💡 この記事でわかること
- 通勤1時間と通勤十分では、1日で1時間40分の差が出るという計算
- 消防の異動で、出張所まで車で1時間半になった同期の実例
- 本署と出張所の中間に住む、という住まいの選び方
- 通勤時間と幸福度の関係を調べた研究(通勤の損失を埋めるには月収の35パーセントが必要)
- 当務明けの運転という、通勤の安全面の問題
今回は「消防士の通勤時間」というテーマで、元消防士として本音で書いていきたいと思います。
僕は5年半、消防士として勤めたあと、今はトラックドライバーをしています。
こんな趣旨のメッセージをいただきました。
お父さんが昔、1時間かけて消防署に通っていて、かなり過酷な生活をしていた。だから仕事選びは、目先のお金だけでなく、仕事以外の条件もしっかり調べた方がいい。
読んだ瞬間、自分のことだと思いました。僕も1時間かけて通っていたからです。
そして今は、職場まで車で5分のところで働いています。両方を経験したうえで、この「仕事以外の条件」について書きます。
- 消防士の通勤時間は短い方がいい|結論
- 通勤1時間と十分の差は、往復で1時間40分
- 1時間40分あれば何ができるか|睡眠とトレーニング
- 「時間がない」人が見落としている、賃金の出ない時間
- 消防士の異動|出張所まで車で1時間半というケースも
- 消防本部の管轄の広さで、通勤事情はまったく変わる
- 消防士が住む場所の選び方|本署と出張所の中間に住む
- 交代制勤務なら、長い通勤も多少は耐えられる
- 当務明けの帰り道は危ない|睡眠不足の運転リスク
- 消防士とマイホーム|僕が賃貸派を選んだ理由
- 通勤が短いと、仕事のパフォーマンスまで上がる
- 通勤時間と幸福度の関係|研究では何が分かっているか
- まとめ|仕事選びは、仕事以外の条件こそ調べる
- 管轄の広さも、消防本部ごとに違います
- よくある質問
- あわせて読みたい
消防士の通勤時間は短い方がいい|結論
身も蓋もない話ですが、これが僕の結論です。
通勤時間は、短ければ短いほどいい。
理由を、数字で書いていきます。
通勤1時間と十分の差は、往復で1時間40分
6時に起きるとします。
1時間かけて通う人は、7時に家を出ないといけません。
家から十分のところに住んでいる人は、8時出勤なら7時50分に出れば間に合います。
この時点で、50分の差です。
帰りも同じです。5時に終わって、1時間かけて帰る人と、十分で帰れる人。ここでまた50分。
合計で、1日1時間40分。
これが毎出勤、消えていきます。
1時間40分あれば何ができるか|睡眠とトレーニング
想像してみてください。
普段7時間寝ている人なら、8時間40分寝られます。 9時間近くです。
ジムにも行けます。僕はボディビルをやっていたので、つい筋トレで例えてしまいますが、1時間40分というのは、1回のトレーニング時間そのものです。
1時間40分から2時間あれば、僕は十分だと思っています。それがそっくり、通勤で消えている。
「時間がない」人が見落としている、賃金の出ない時間
もちろん、どうしようもない場合はあります。
マイホームを買っていて、そこからしか通えない。そういう方もいると思います。
ただ、独身なら職場の近くに引っ越せます。 家族がいても、賃貸なら異動に合わせて動けます。
自分の時間は有限です。そして通勤は、賃金が発生しない時間です。
時給に換算するのは好きな考え方ではありませんが、それでも1日1時間40分をタダで差し出していると思うと、やっぱり短い方がいいと思うんです。
残業が多い職場なら、なおさらです。残業して、そのうえ通勤に1時間。そうなると、余暇の時間はほとんど残りません。 副業をやりたくても、時間が取れません。
消防士の異動|出張所まで車で1時間半というケースも
ここからが、消防特有の話です。
消防は、異動がつきものです。 容赦なく動かされます。
僕の同期の話を書きます。
その同期は、町の中心にある消防署で2〜3年勤めました。実績を積んで、これから救助隊として頑張っていこう、と意気込んでいたところで異動です。
行き先は、車で1時間半ほど離れた出張所でした。
町の中心から、かなり田舎の方へ。通勤時間が、一気に変わってしまったわけです。
消防本部の管轄の広さで、通勤事情はまったく変わる
ここは、受ける前に見ておいた方がいいところです。
小さい消防本部なら、本署と出張所が一つというところもあります。それなら、どこに住んでいても通勤はそこまで苦になりません。
一方で、管轄が広い本部だと話が変わります。マイホームを買って、この署で働くつもりだったのに、遠い出張所に飛ばされる。そうなると、通勤時間が一気に重くなります。
同じ「消防士」でも、本部によって生活がまったく変わるということです。
消防士が住む場所の選び方|本署と出張所の中間に住む
ではどうするか。僕が思うのは、中間地点に住むという考え方です。
本署から1分のところに住んでも、出張所まで1時間かかるなら意味がありません。
それなら、本署まで十分、出張所まで15分から20分。そういう場所を選んでおく。
出張所勤務になる確率もふまえて、両方から通える位置に住む。これができると、異動が来ても生活が崩れません。
受ける前に、本署と出張所の位置関係を地図で見ておく。それだけでも違うと思います。
交代制勤務なら、長い通勤も多少は耐えられる
消防のいいところも書いておきます。
1日働いて、2日休み。 この勤務形態のおかげで、通勤の長さは多少救われます。
毎日1時間かけて通うのと、月に10日ほど1時間かけて通うのとでは、話がまったく違います。休みが多いぶん、「まあ、いいか」と思える部分はあります。
そこは、交代制勤務の大きな利点だと思っています。
当務明けの帰り道は危ない|睡眠不足の運転リスク
ただ、これだけは書いておきたいです。
消防は、寝不足で帰る日が多い仕事です。
夜通し出動して、ほとんど眠れないまま朝を迎える。その状態で、1時間かけて帰る。
僕も経験しましたが、あの運転が安全かと言われると、正直そうではありません。
睡眠不足だと判断力が落ちます。歩行者を見落とすかもしれない。電車でも、疲れ切った体で1時間揺られるのは、それだけでストレスです。
通勤の長さは、安全の問題でもあります。
消防士とマイホーム|僕が賃貸派を選んだ理由
少し脱線しますが、大事なところなので書きます。
僕は、マイホームを買うのはやめようと決めました。
「マイホームは借金ではない」と言う人がいます。でも僕は、不動産投資と同じだと思っています。
ローンは家賃とは違います。利息と元本を払い続けて、売るときに買った価格で売れる保証もない。安く売れて借金だけが残り、そこから賃貸に移れば、借金と家賃の両方がのしかかります。そこに離婚や養育費が重なれば、破産まで一直線です。
リスクが大きすぎる。だから僕は賃貸派です。
そして賃貸なら、異動のたびに職場の近くへ動けます。 この身軽さは、消防のように異動がある仕事では、かなり大きいと思っています。
通勤が短いと、仕事のパフォーマンスまで上がる
短い通勤のメリットは、時間だけではありません。
家でリラックスできる時間が長くなります。その分、余分に眠れます。体が休まります。
体が休まれば、次の日のパフォーマンスが上がります。
パフォーマンスが上がれば、気配りもできるようになる。気配りができれば、怒られにくくなる。
いいことずくめなんです。
ちなみに「通勤を運動にしている」という方もいます。自転車や徒歩で通って、それを運動にする。否定はしません。
ただ僕は、家に帰って、準備して、気持ちを作ってからトレーニングした方が絶対にいいと思っています。仕事帰りは荷物もあるし、頭には仕事のことが残っています。同じ条件でやる方が、体にはいいはずです。
そもそも運動しなくても、その時間で寝れば体力は回復します。 回復した状態でトレーニングすれば、いい循環が生まれます。
通勤時間と幸福度の関係|研究では何が分かっているか
ここは、僕の体感ではなく、調べたことを書きます。「通勤が長いとしんどい」という話に、きちんとした裏づけがあるのかが気になったからです。結論から言うと、国内外の調査で同じ方向の結果が出ていました。
日本の調査|通勤時間が長くなるほど、幸福度は下がる
ニッセイ基礎研究所が、全国の18歳から64歳の男女被用者5594人を対象に行ったウェブ調査(回答期間は2020年2月28日から3月25日)の分析があります。
健康状態、通勤手段、年収、性別、年齢、婚姻状況といった要因を調整したうえで、片道の通勤時間と幸福度の関係を推計したところ、片道十分以内の人を基準にすると、通勤時間が長くなるほど幸福度がより大きくマイナスになるという結果でした。とくに片道90分以上の人は、幸福度が低い傾向がはっきり出ています。
ちなみに同レポートでは、平成28年の社会生活基本調査をもとに、日本の通勤・通学時間の平均は平日で往復1時間19分だと紹介されています。ひと月(20日)にすると、26時間20分です。
なお、この分析は一時点の観察データなので、因果関係までは断定できない、と研究者自身が断っています。そこは正確に書いておきます。
イギリスの調査|15分を超えたあたりから、幸福度が下がり始める
イギリスの国家統計局(ONS)が2014年に公表した「通勤と個人の幸福」という分析では、通勤時間が1分増えるごとに、生活満足度・人生の価値の実感・幸福感が下がり、不安が上がるという結果が出ています。
平均でみると、幸福感が下がり、不安が上がり始めるのは通勤15分を超えたあたりから。そして片道61分から90分の通勤者は、15分以内の人と比べて、不安が0.32ポイント高く、生活満足度が0.17ポイント低い(いずれも0から10の尺度)という数字が示されています。
「給料で埋め合わせれば済む」とはならない
もう一つ、よく引かれるのが、経済学者のアロイス・シュトゥッツァーとブルーノ・フライが2008年に発表した「通勤のパラドックス」という研究です。ドイツの大規模な家計パネル調査を使っています。
経済学の標準的な考え方では、通勤の負担は「給料が高い」か「住環境がいい」かで埋め合わされているはずだ、とされます。ところが結果は逆でした。
・通勤時間が長い人ほど、主観的な幸福度が低い。片道1時間の人で、平均して約0.2ポイント低い
・仕事の満足度も、片道1時間の人は約0.24ポイント低い。「通勤が長い人ほどいい仕事に就いている」という関係は確認できなかった
・片道22分の通勤を埋め合わせるには、月およそ470ユーロ、平均月収の35パーセントにあたる追加収入が必要という試算
片道22分で、月収の3分の1。この試算をそのまま鵜呑みにするつもりはありませんが、「通勤が長いぶん給料が高いから、差し引きゼロ」にはならないという方向性は、僕の実感とぴったり重なりました。
出典:ニッセイ基礎研究所「通勤時間と幸福度の関係-リモートワークの拡大で幸福度は高まるか?」(2020年)/英国国家統計局「Commuting and Personal Well-being, 2014」/Stutzer & Frey「Stress that Doesn’t Pay: The Commuting Paradox」(Scandinavian Journal of Economics, 2008)
まとめ|仕事選びは、仕事以外の条件こそ調べる
正直に書きます。
消防にいたころの僕は、仕事に行くのが嫌でした。
「仕事が楽しくてたまらない」というワクワク感は、一度もありませんでした。やりがいがあるから今日も頑張ろう、と自分に言い聞かせて、なんとかモチベーションを作っていた。
そのうえで、嫌なことをしに、1時間かけて車を走らせる。
あれは、しんどかったです。
今は職場まで車で5分です。通勤については、本当に文句がありません。
三十を過ぎてから、時間の考え方が変わりました。1年1年を無駄にしたくない。そう強く思うようになりました。
通勤時間に取られる時間は、えげつないです。 これから就職する方は、ぜひ一度、そこを考えてみてください。
そして、メッセージをくださった方が書いていたことが、まさにここだと思います。
仕事選びは、目先のお金だけで決めない方がいいです。
給料と休みの日数は、求人票に書いてあります。でも、通勤時間、異動の範囲、出張所の位置、当務明けの帰り道。こういう仕事以外の条件は、自分で調べないと出てきません。
そして生活を左右するのは、たいていこちら側です。
管轄の広さも、消防本部ごとに違います
最後に書いておきます。
ここまで書いたのは、僕がいた一つの本部での話と、同期から聞いた話です。
管轄の広さも、出張所の数も、異動の頻度も、本部が変われば本当に変わります。
ただ、それは実名を出さないと意味のない話です。無料の記事で書けることではないので、有料の記事にまとめました。
元消防士として、実名で書いています。
▼受けるなら、ここだと思う5本部
愛知県で本当に受けるべき消防本部、元消防士が実名で5つ選びました
▼逆に、僕ならすすめない5本部
愛知県で受けない方がいい消防本部、元消防士が実名で5つ書きました
よくある質問
Q. 消防士は、管轄の市町村に住まないといけませんか?
A. 本部によって考え方が違います。居住地の制限がないところもあれば、災害時の招集を考えて管内やその周辺に住むことを求められるところもあります。受ける前に、募集要項や説明会で確認しておいた方がいい項目です。
Q. 異動はどれくらいの頻度でありますか?
A. これも本部によります。僕の同期は3〜4年目で、車で1時間半ほど離れた出張所に異動になりました。本署と出張所がいくつあるのか、その距離はどれくらいかを、受ける前に地図で見ておくことをおすすめします。
Q. 当務明けの運転が心配です。どうすればいいですか?
A. いちばん確実なのは、通勤距離を短くしておくことだと思います。そのうえで、眠気が強い日は署の駐車場で仮眠してから帰る、公共交通機関を使うなど、選択肢を用意しておくといいと思います。睡眠不足の運転は、判断力が落ちます。
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この記事は、note にも掲載しています。note版はこちら
最後まで読んでいただきありがとうございました。
元消防士のトラックドライバー🧑🚒🚚


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