💡 この記事のポイント
- 「死ぬ気で覚えろ」は正しい。ただ、それを人に押し付けないほうがいい
- 百パーセントで臨んで、7〜8割残ればいい。完璧には覚えられない
- 地理は主要道路から。骨格ができたら「消防車が通れない場所」を押さえる
- 足りない2〜3割は、チームで埋める。聞きにいくこと自体が先輩との距離を縮める
今回は「死ぬ気で覚えれば、覚えられます」というメッセージについて、元消防士として本音で書いていきたいと思います。
僕は5年半、消防士として勤めたあと、今はトラックドライバーをしています。
先日、「新人消防士が最短で管内を覚える方法」という記事を書きました。それに対していただいたのが、冒頭のメッセージです。
「明けの日に死ぬ気で回れば、覚えられます」
結論から言うと、これは、まったくその通りだと思っています。ただ、その上でどうしても書いておきたいことがあったので、今回のテーマにしました。
まず結論。そのメッセージは、正しい
僕の前提として、「死ぬ気でやる」というのは大前提です。そこは間違いなくその通りだと思います。
本気でやればやるほど、結果はついて回る。これは消防に限った話ではなくて、どんな仕事でも同じですよね。だから「死ぬ気でやる」というマインドは、すごく大事だと思っています。
僕が書いたのは、その大前提の上で「こういう工夫をすれば、もっと早く覚えられたな」という話です。当時の自分を振り返って、もう少し効率よくできたなと思うことがあったので、それを言葉にしたものでした。
僕自身、人の2〜3倍やらないと追いつけなかった
そもそも僕は、不器用で、要領もそんなに良くなくて、コミュニケーションも正直得意ではありません。
だから、どうしても人の2〜3倍はやる必要がありました。それはもう、しょうがないなと思いながら、いつもやってきたことです。
自分が「できない」と自覚しているなら、人の2〜3倍やる。死ぬ気でやる。この部分については、いただいたメッセージの通りだなと、心から思っています。
ただ一つだけ。それを、人に押し付けないでほしい
その上で、一つだけ勘違いしてほしくないことがあります。
それを、人に押し付けないほうがいい。 僕はそう思っています。
人それぞれ、人間性も違います。覚えの早さも人それぞれです。そして何より、刺さる言い方が人によって全然違うんです。
厳しく言われたほうが伸びる子もいます。一方で、優しく諭すように言われたほうが響く子もいます。同じ内容を伝えても、届く人と届かない人がいる。
だから教える側は、ハッパのかけ方、言い方を、ものすごく考えなきゃいけないなと感じています。
「明けで死ぬ気で回れ」は、正しいけれど
本音を言えば、「明けの日に死ぬ気で回れ」で話は済むんです。実際、間違ってはいません。
昼まで回るとか、1時間じゃなくて2〜3時間、消火栓や防火水槽を回って覚える。先輩も「俺はこうやって工夫して覚えたよ」という言い方をすると思います。
内容としては、何も間違っていない。
ただ、言い方はすごく大事だなと思うんです。メッセージをくださった方は、根性論や昭和の教育を受けてきた方なのかなと想像しています。
僕自身も、学生時代はずっと体育会系でしたから、そういう指導は受けてきました。そう言われるとやる気になる、やらなきゃいけないなと思える。そういう面は確かにあります。
でも一方で、そういう言われ方で気持ちが弱ってしまう人もいる。いろんな人がいるよね、という話です。
全部を完璧に覚えなくていい。7〜8割でいい
ここからが、本題です。
どんな仕事も、覚えることはたくさんあります。でも僕は、その全部を完璧に覚えなきゃいけないわけじゃないと思っています。
もちろん、100パーセント覚えるつもりで臨むことは、すごく大事です。そのスタンスで地理を覚えにいく。それは前提です。
ただ現実には、7〜8割でいいと思っています。
多少覚えていないところがあっても、大枠さえ押さえていれば、現場では十分に活躍できます。人間、完璧には覚えられませんから。100パーセント覚えるつもりで臨んで、6〜7割しか頭に入らない。それはもう、しょうがないと思います。
僕自身がそうでした。そしてその6〜7割を覚えるためにも、人の2〜3倍やらなきゃいけなかった。だから「2〜3倍やる」を一つの目安にしていたんです。
新人や若手のうちは、7〜8割覚えられれば、大枠は間違いない。僕はそう思っています。
地理は「絶対に押さえるべき大枠」から
地理についても同じです。
「あの辺に消火栓がある」くらいのイメージで、まずは全然いいと思います。
今はAVMという、ナビのようなものもあります。ただ、正直に言うと、精度はあまり良くありませんでした。通れないところを道として案内してくることもあったんです。僕が辞めたのは3年ほど前なので、今の精度は分かりませんが、少なくともAVMに頼りきらないほうがいいとは思っています。
そのうえで、管轄の中で何から押さえていくか。
僕がいつも言っているのは、まず主要道路から覚えてくださいということです。管内の背骨になる太い道。ここが頭に入っていれば、細かい道が分からなくても、現場の方向へは向かえます。
そして、その骨格ができたら次に押さえてほしいのが、「そこは通れない」という場所です。消防車では絶対に通れない。救急車でも厳しい。そういう場所さえ大枠で押さえておけば、現場ではかなりいけるはずです。
細かい消火栓の一本一本は、そのあとで十分。優先順位は、そういう順番でいいと思います。
前回の記事で「一人で一筆書きで回ってみてください」と書いたのは、まさにここに気づくためです。一人で回ると、「ここは一方通行だ」「ここは道が狭くて消防車が入れない」というのが、体に入ってきます。地図やナビだけでは、絶対に分からない部分です。
7〜8割で回すための、優先順位
ここからは、ブログだからこそ書き足しておきます。「7〜8割でいい」と言われても、どの7〜8割なのかが分からないと動けないと思うので、僕なりの優先順位を書いておきます。
上から順に、先に押さえるべきものです。
- 主要道路。ここが最優先です。管内の背骨になる道を先に頭に入れる。ここさえ入っていれば、細かい道が分からなくても現場の方向へは向かえます
- 通れない場所。主要道路の骨格ができたら、次はここ。消防車が入れない道、一方通行、高さ制限。ここを外すと、現場到着そのものが遅れます
- 大きな水利の位置。消火栓の一本一本より、まず防火水槽など「確実に取れる水」がどこにあるか
- 目標物。「◯◯の交差点を北」と言われて絵が浮かぶかどうか。ここが分かると、無線のやりとりが一気に楽になります
- 車両ごとの積載位置。「あれ持ってきて」に応えられるかどうかは、新人の評価に直結します
なぜ主要道路が先かというと、細かい道から覚えようとすると、いつまでも地図がつながらないからです。太い道が頭に入っていれば、そこを基準に「あの道の一本裏」という覚え方ができるようになります。逆に細部から入ると、点が点のままで、いつまでも面になりません。
逆に、後回しでいいと僕が思っているのは、細かい数値の暗記です。使用期限や耐荷重は大事ですが、調べれば出てくるものでもあります。先に覚えるべきは「調べている時間がない場面で必要になるもの」。この基準で選ぶと、優先順位はだいたい決まります。
資機材も「ある程度を押さえる能力」が要る
資機材の知識も、もちろん大事です。
使用期限、耐荷重。倍力を組むなら、ロープが何メートル必要か計算しないといけない。こういう知識は、頭に入れておくべき本当に大事なものです。
ただ、それでも「完璧に覚えろ」ではないと思うんです。
ある程度を押さえる能力。これも、同じくらい必要な力だと僕は思っています。
足りない2〜3割は、チームで埋めればいい
なぜ7〜8割でいいと言い切れるのか。消防はチームで動くからです。
人には得意分野があります。地理が苦手な人もいる。でもその人が、機関操作はものすごく得意で、運転もうまい、ということは普通にあるんです。
そういう人に対して、周りが「ここは狭いから迂回して、南からじゃなくて北から入ったほうがいい」と声をかける。そうやって補い合うのがチームワークです。
もちろん隊長が指揮してくれることもありますし、後のフィードバックで「これは知っておいたほうがいいよ」と教えてもらえることもある。
一人で百点を取る仕事ではないんです。 だからこそ、7〜8割でいい。
残した2〜3割が、先輩との距離を縮める
そしてもう一つ。これは、僕が消防にいて強く感じたことです。
分からないことがあったら、詳しい先輩に聞く。「これってこうですか?」「これはこうだと思うんですけど、合ってますか?」と。
この足りない2〜3割を聞きにいくことで、コミュニケーションが深まっていくんです。
前回の記事でも、「気になる場所は先輩に『ここは無理ですよね?』と確認してみてください」と書きました。あれは覚え方のコツであると同時に、先輩との距離を縮める方法でもあるんです。
逆に、全部を完璧に覚えてしまったとしたら、どうでしょうか。先輩からすると、正直そんなに可愛くないですよね。資機材の知識をひけらかして、マウントを取るような感じになってしまう。そういう人、いるじゃないですか。
だから僕は、あえてアホを演じるのもアリだと思っています。本当は知っているけれど、「これってこうですよね?」「あ、そうだったんですね」と聞いてみる。いわゆる、かわいい後輩ムーブです。
先輩からすると、ちょっと足りていない子のほうが可愛い。そのうえで「あ、ちゃんとやる気はあるんだな」「ここは押さえてるんだな」というところを見せていくと、好感度はどんどん上がっていきます。
僕の周りにも、「絶対これ知ってるだろ」という人が、あえてそのムーブをかましていました。先輩の立場になってみると、あれは本当に可愛いなと思います。
もっとも、尊敬できない先輩に対しては、思いっきりマウントを取りにいく人も中にはいましたが。そこは、相手を見て使い分ければいいと思います。
消防はどうしても、人間関係の世界です。教える側にも、教わる側にも、言い方がある。そのことは、覚えておいて損はないと思います。
それでも「死ぬ気で覚える」くらいで、ちょうどいい
ここまで「7〜8割でいい」と書いてきましたが、最後に本音を書きます。
僕個人の意見としては、死ぬ気で覚えるくらいのメンタルで、ちょうどいいと思っています。
消防を志して、それを仕事としてやっていく以上、絶対に覚えなきゃいけないことがある。そこは間違いありません。
ただ、覚えることはとんでもない数があります。全部を全部覚えきるのは、正直かなり難しい。頑張った結果、要領が悪くてこぼれてしまう部分が出てくるのは、しょうがないことです。
だから、死ぬ気で覚えにいって、7〜8割残ればいい。僕はそのくらいの感覚でいいと思っています。
僕自身、振り返ってみると、本当に死ぬ気で覚えた時期がありました。1年目、2年目なんて、覚えることしかなかった。そういう思い出があります。
今まさにその真っ只中にいる方は、大変だと思います。でも、その2〜3倍やった時間は、必ず自分に残ります。
どうか、頑張ってください。
その7〜8割を、どの順番で取りにいくか
「7〜8割でいい」までは、無料の記事でも書いてきました。問題は、その7〜8割をどの順番で取りにいくかです。雑務・資機材・地水利。何を先にやって、何を後回しにするか。ここを間違えると、同じ努力の量でも結果がまったく変わります。
5年半やって、辞めて、外から見て、ようやく整理できた順番を、有料の記事に一本にまとめました。
▼不器用なまま、消防士で生き残る(note・有料)
不器用なまま、消防士で生き残る。五年半かけて分かった「順番」
よくある質問
Q. 「7〜8割でいい」と聞くと、手を抜いていいように感じます。
A. 逆です。100パーセント覚えるつもりで死ぬ気でやって、結果として7〜8割残る、という話です。最初から7割を狙うと、たぶん半分も残りません。狙いは100、着地は7〜8割。そのくらいの感覚です。
Q. 地理は、何から覚えればいいですか?
A. 主要道路から覚えてください。 管内の背骨になる太い道が頭に入っていれば、そこを基準に「あの道の一本裏」という形で細かい道を足していけます。細部から入ると、いつまでも地図がつながりません。主要道路の次に「消防車が通れない場所」、そのあとに水利、という順番がおすすめです。
Q. 先輩に何度も聞くと、迷惑ではないでしょうか?
A. 僕の実感では逆でした。聞きにいくこと自体が、先輩との距離を縮めてくれます。全部を完璧にこなしてしまう後輩より、少し足りないくらいのほうが可愛がってもらえます。ただし、やる気は見せること。そこがないと、ただ覚えない人になってしまいます。
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最後まで読んでいただきありがとうございました。
元消防士のトラックドライバー🧑🚒🚚


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