消防士は、覚えることが多すぎる。物覚えが悪かった元消防士が語る、新人業務のリアル

消防士のリアル

💡 この記事のポイント

今回は「消防士は、覚えることが多すぎる」というテーマで、元消防士として本音で書いていきたいと思います。

僕は5年半、消防士として勤めたあと、今はトラックドライバーをしています。

いろんな仕事を見てきて、あらためて思うんです。消防士って、本当に覚えることが多い。特に僕みたいな物覚えの悪い人間には、正直ハンデのある仕事です。でも、そこは努力でカバーできる。この記事では、新人消防士を待っている「雑務」と「覚えること」のリアルを、具体的に共有したいと思います。

新人の1日は、雑務で始まり雑務で終わる

消防学校で基礎を学んで、いざ消防署に配属される。そこで待っているのが、山のような「新人の仕事」です。僕が新人時代にやっていた雑務を、ざっと挙げてみます。

食堂で使うきれいなタオルも、車両用の雑巾も、洗濯して畳んで、次のグループに引き渡す。起床後にみんなが使う車両用のタオルも、使い終わったら洗濯して畳む。これ、ちゃんとやっていないと、次のグループに引き継いだときに「これ、やってないじゃん」と思われてしまう。だから、手を抜けないんです。

弁当の注文も、立派な業務

朝は車両の点検から始まり、消防体操。この体操も、新人が一人で前に出て、見本として掛け声をやります。引き継ぎが終わったら、先輩たちの弁当の注文を取る。

「弁当の注文なんて」と思うかもしれませんが、これが意外と難しい。お釣り用の小銭を用意しておかないと、先輩にお釣りを返せません。しかも、出動が重なると、注文そのものができなくなる。だから僕のいた消防本部では、お昼は各自の持参弁当か、出前で取る形にしていました。

夕方から翌朝まで、やることだらけ

夕方17時ごろ、今度は国旗を降ろして、車両の鍵を回収します。夜に鍵を差しっぱなしにしておくと、盗難の恐れがあるからです。車両点検表を回収して、異常がなかったかをまとめて担当に提出するのも、新人の事務処理でした。

夜間に出動指令が入れば、いち早くシャッターを開ける。そのとき、出動車両の鍵の所在も把握しておく。

そして翌朝。みんなの起床(6時50分ごろ)より少し早く起きて、シャッターを開けて、車両に鍵を差しに行って、国旗を揚げる。署内のゴミを集めて片付けて、前日に出たタオルを洗濯して、前のグループが干した洗濯物を畳んで食堂へ戻す。起床の時点で夜間出動中の隊があれば、その隊の布団を畳んでおいてあげる。訓練で使ったホースは翌日、二重巻きにして収納しますが、それも若手が気づいて、みんなに声をかけて巻いてもらう。

──どうでしょう。雑務だけでも、ざっとこれだけあるんです。

雑務の先に待つ、膨大な「覚えること」

でも、本番はここからです。雑務とは別に、消防士としての知識を覚えていかないといけない。

まず、僕が最初に混乱したのが「隊の編成」です。火災のときはこの車両に乗る。この隊は救急の一次隊。火災ではこの車両に乗るけれど、このうち3人は二次で出ていく救急隊。ポンプ支援隊はまた別──。最初は全く意味がわからなくて、乗車するたびに先輩に聞いていた覚えがあります。僕のいた本部は人数が少なかったので、一人がいくつも兼務していて、なおさら複雑でした。

そのうえで、救助の資機材の取り扱いと救助の知識。消火に関わる化学の知識。機関員になるなら、ポンプの構造、水の性質、薬剤の知識。救急に乗るなら、救急に関する知識、救急資機材やプロトコール、救急車内の資機材の配置。救急車の機関員なら、病院までのルートまで覚えます。今はナビがありますが、ルートにこだわりの強い先輩だと、その通りに行かないと怒られたりもするんです。

何よりも最初に覚えるべきは、「地理」

そして、新人が何よりも最初に覚えないといけないのが、管轄の「地理」です。

この現場までどれくらいで着くのか。将来、機関員になったときのために、水利(消火栓や防火水槽)の場所、目標物はどこか。これを把握していない状態で現場に向かうのは、正直、結構怖い。だから地理だけは、絶対に頭に入れておく必要があります。

「あれ持ってきて」に応えるのが、新人の仕事

消防車に載っている資機材が「どこに」「何が」あるのかも、絶対に覚えます。

新人に求められるのは、言われたことをしっかり遂行すること。「あれ持ってきて、これ持ってきて」に応えるのが、ほぼ100%新人の仕事だと思ったほうがいい。でも、1台の車両に積まれている資機材は、何百個という数です。先輩に「持ってこい」と言われて持ってこられない状況は、本当に厳しい。だから僕は、死ぬ気で覚えました。

覚えることは、無限にある

1個覚えたら、また1個できないことが増えていく。まるで、いたちごっこのような状態がずっと続きます。

しかも、消防は基本的に年功序列で昇級していくので、役割が上がるにつれて、覚えることもどんどん増えていく。名前を覚えたら、今度は使い方。場所が分かっても、新人はまだ使えない。救助方法も、活動の仕方も、ものすごい数があります。

特に田舎の消防は兼務が多く、「消火隊だけ」「救助隊だけ」という専属特化にはなれません。救急担当でも消火の知識は必要だし、救命士でも火災でタンク隊として出動するし、内部進入だってやる。だから、覚える範囲に際限がないんです。

物覚えが悪くても、努力でカバーできる

僕は、本当に物覚えが悪い人間でした。資機材の名前は暗記でなんとかなっても、使い方や、訓練しないと身につかないものには、人一倍苦労しました。

だから僕は、何回も何回も訓練をさせてもらいました。空いた時間に自分で資機材を触って、体で覚えていきました。覚えてしまえば、消防の仕事はぐっと楽になります。

これから消防士になる人へ。覚えることは、鬼のようにあります。それだけは肝に銘じて、飛び込んでください。物覚えに自信がなくても、大丈夫。努力の量は、裏切りません。僕でも、なんとかなりましたから。

覚えることの「順番」は、有料の記事にまとめました

覚えることは、鬼のようにあります。一個覚えたら、また一個できないことが増えていく。だからこそ、何を先にやって、何を後回しにするかが大事です。初任科から戻って、まず場所を覚えるべき6つの資機材から、地水利をいつまでにどこまで入れればいいかまで、順番ごと一本にまとめました。

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よくある質問

Q. 新人のうちは、どれくらい雑務がありますか?
A. 洗濯、国旗の上げ下ろし、車両の鍵の管理、点検表の取りまとめ、ゴミ捨て、ホースの片付けなど、1日を通して常にあります。特に朝と夕方に集中します。消防本部によって細かい内容は違いますが、「新人=雑務が多い」のはどこも共通です。

Q. 一番最初に覚えるべきことは何ですか?
A. 管轄の「地理」です。現場までのルート、水利(消火栓・防火水槽)の位置、目標物。ここが頭に入っていないと、出動そのものが不安になります。次に、車両に積まれている資機材の場所と名前です。

Q. 物覚えが悪くても、消防士は務まりますか?
A. 務まります。僕自身が物覚えの悪い人間でした。暗記でどうにもならない部分は、繰り返し訓練して体で覚えるしかありません。時間はかかりますが、覚えてしまえば仕事は一気に楽になります。

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